基礎的財政収支(プライマリー・バランス、以下PB)とは、国債の償還費・利払い費を除いた政府の歳出と、税収・税外収入の収支バランスのことを指します。
一方、財政収支とは、国債の償還費のみを除いた政府の歳出(国債利払費含む)と、税収・税外収入との収支バランスを指します。
当然のことながら、財政収支のほうが歳出側に国債利払費を含めますので財政規律としては厳しい指標となります。
財務省は日本政府の財政規律をPBから財政収支に変更したくて仕方ないらしい。
とはいえそれでも、政府のネットの利払費(対GDP比)を国際比較してみますと、我が国のそれはG7諸国の中でカナダに次いで財政状況が良い状況にあります。
にもかかわらず、財務省及び財務省に洗脳されている緊縮財政派たちは性懲りもなく「我が国は国債利払費を返済するのが大変だぁ」と強調しています。
ご存じのとおり、日本政府はコロナ禍の2019年末から2020年末にかけて国債発行残高を66.7兆円も増やしました。
わずか1年間で66.7兆円の国債発行残高の増加、即ちざっくり言えば財政赤字が66.7兆円ということです。
それで何が起きましたでしょうか。
残念ながら何も起きていません。
何度も言うとおり、我が国は変動為替相場制を採用する独自通貨国です。
政府が財政出動で需要を拡大しても供給能力に余力があるため、インフレ率がそれほど上がらないのでございます。
現在のインフレは、輸入物価上昇に伴うコストプッシュにより上昇しているに過ぎません。
政府支出の拡大によってインフレ率が上がらない以上、政府は新規国債を増発し、国民のために財政支出を拡大して構わない。
財務省が主導してきたPB黒字化路線は、日本政府の財政支出を抑制させデフレを長期化させてきました。
結果、我が国の供給能力はひたすらに破壊されてきたのですが、それでもまだデマンドプル・インフレ(需要過多)には陥っておりません。
そこに日本経済の底堅さがあるのですが、もしも財務省の思惑どおりにPBから財政収支へと財政規律が強化されれば、さらなる緊縮財政が行われ、虎の子の供給能力は取り返しのつかぬまでに破壊されることになります。
9月に予定されている自民党総裁に上がっている顔ぶれをみますと、今のところ財務省様の覚えめでたい人しか名前がでていません。
仮に総裁選挙後に衆議院解散・総選挙が行われた場合、誕生した新政権が緊縮派になるのか積極財政派になるのか、まさに我が国の命運を分けることになります。
政局は実に不透明です。