東京都知事選挙は相場どおり、小池氏が現職の優位性を大いに活かし、290万票の大台を超える得票数で再選されました。
なお、これもいつもどおりですが、選挙戦は主として都民や世の中が持つ「ぼんやりとしたイメージ」が先行するだけで、まともな政策論争など何もありませんでした。
候補者のなかには真理を突く演説で地道に有権者に訴えた人もおられましたが、これまた現今日本の悪しき性(さが)でメディアや多くの都民は黙殺しました。
再選した小池氏の言葉を聞いてがっかりしましたが、あの人は相変わらず「少子化対策=子育て支援」という発想でいます。
むろん、子育て支援が無意味だとは言いませんが、少子化の最大の要因は、大多数の若者が経済的に貧困化して結婚さえできないことです。
統計が示しているように、ここ数年は結婚した女性(有配愚者女性)の出生率は増えているものの、結婚する若者が減っています。
要するに、結婚できるぐらい所得のある若者世帯は子供を出産されており、所得の少ない若者は結婚そのものができないということです。
蓮舫氏は若者支援を訴えつつも、「若者たちに夢を…」と叫ぶばかりで自ら問題点を抽象化してしまい、小池氏の少子化対策のポイントがズレていることを追及できませんでした。
といっても、民主党政権時代も結局は「子供手当」なる、既に結婚されている世帯への支援策しか打ち出せなかったのですから、蓮舫氏の訴えに説得力が欠けるのも当然です。
今、東京都及び首都圏が抱えている最も大きな問題は、首都直下型地震(+南海トラフ巨大地震)への備えです。
すでに、いつきてもおかしくない状況にあります。
それについて小池氏は我が国の首都を預かる都知事として、これまでいったいどのような具体策(防災インフラの整備など)をとってきたのでしょうか?
もしかすると「議論だけはしている…」と言うのかもしれませんが、議論だけでも足りていないのが実状です。
仮に首都直下型地震が発生すると、まちがいなく数百万人の被災者がでます。
この数百万人を1週間生き延びさせるだけで、人類が経験したことのない巨大プロジェクトになります。
そこに南海トラフ巨大地震や富士山の噴火が重なると、東京のみならず日本国そのものの存亡にかかわります。
今回の都知事選挙では56人もの候補者がおられましたが、誰一人としてこの危機を回避するための解決策を示してはくれず、結局は例によって有権者のルサンチマンを煽る候補者が躍進しました。
その点、我が国の民主主義の貧困化を感じさせる選挙でもありました。