復興を阻む緊縮予算

復興を阻む緊縮予算

総務省は昨日(6月25日)、被災自治体である石川県に対し、520億円の特例交付を決定しました。

特例交付とは、地方交付税法第15条に基づいて被災した自治体に対し特例的に交付するおカネのことで、520億円を現金で交付します。

当初は300億円程度とされていたらしいのですが、地元の自民党議員など与党関係者たちが声を上げたことで、なんとか520億円まで引き上げたと仄聞しています。

能登半島地震からの復興が遅々として進まないのは、本格的な補正予算が組まれることなく、これまで予備費で対応してきたからです。

この半年間で被災地に支出してきた予備費は、わずか4000億円を超える程度です。

川崎市の年間予算でさえ約1兆5,000億円あるのですが、その3分の1以下の額でどうやって復興しろというのでしょうか。

むろん、おカネの問題だけではありません。

土木や建築などの供給能力が、「震災復興」という需要に追いついていないことも大きな原因です。

ただ、供給能力が能登半島に集まらないのもまた、結局は予算が不十分だからです。

例えば、「能登半島の復興現場の仕事を受注すれば必ず儲かる!」という状況にすれば、日本全国から関連業者が集まってくるはずです。

とはいえ、30年間ちかくもデフレを放置してきた我が国では、どこの地域でも建設業関連の供給能力は減退しています。

実はこれこそが最も恐ろしいことで、供給能力が衰退してしまうと、どんなにおカネがあってもサービスや商品が手に入らないという発展途上国状態になってしまうのでございます。

要するに、自国の企業、人材、技術では、「橋を架けられない」「高層ビルを建てられない」「機械をつくれない」「教育をできない」「治療できない」「災害から復興できない」、これこそが発展途上国化(=衰退途上国化)です。

約30年間にわたり、まともなデフレ対策が講じられず、各分野における投資も進みませんでしたので、当然のことながらこうなるわけです。

繰り返しますが、問題はおカネではなく「供給能力」なのでございます。

供給能力に乏しい国は、どんなに政府がおカネを発行(支出)したところで、どうにもならないのです。

その意味で、我が国は既に発展途上国化の入口に差し迫りつつあります。

在りもしない「財政破綻論」に怯え、PB黒字化目標など全くもって意味のない歳出制限を設け、自殺的な緊縮財政路線をとってきたわけですから当然の結末です。