今月の15〜16日の二日間、スイスで「ウクライナ平和サミット」なるものが開催される予定です。
ロシアはもちろん参加しませんが、ロシア以外にも参加を辞退している国があります。
中国はすでに参加を辞退していますし、おそらくイランも参加しないでしょう。
そのほか、南アフリカ、サウジ、インド、ブラジルなど、けっして影響力の少なくない国々の参加についても依然として明らかになっていません。
これらの国際情勢をみても、欧米勢力が一枚岩ではないことがよくわかります。
とりわけ、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以降、ロシア、中国、イランのいわゆるリビジョニスト国家の結びつきは、そこに北朝鮮を加えて益々強固なものになっています。
例えば、ウクライナ侵攻以降のロシアの対中輸出は、原油だけでも2400億ドル規模という史上最高の額に達する一方、工作機械、精密光学製品、超小型電子部品などの防衛生産基盤の多くをロシアは中国に依存しています。
中国もまた、2018年から2022年にかけて兵器輸入の83%をロシアに依存しているというから相互の軍事的結びつきが強くなって当然でしょう。
また、侵攻後、ロシアは3,700機以上のイランモデルのドローンを投入しているというし、北朝鮮からも相当数の弾薬、弾道ミサイルを購入しています。
これら、中国、イラン、北朝鮮の支援がウクライナ戦争でのロシアの軍事的優位性を強化していることは言うまでもありません。
ロシア、中国、イランの三カ国は、ことし3月の合同演習を含めて、3年連続でオマーン湾での合同海軍軍事演習を行っています。
因みにプーチン大統領は、中国と北朝鮮との三カ国による海軍軍事演習をも提案しているらしい。
北朝鮮は、イランが支援しているとされるヒズボラやハマスにも兵器を供給しているようです。
要するに、反欧米勢力に対抗する枢軸として、ロシア、中国、イラン、北朝鮮の連携が強まっているわけです。
むろん、これら4カ国には、それぞれに歴史的な因縁がありますので、亀裂の芽がないわけではありません。
ロシアと中国は今なお中央アジアの勢力圏を互いに競い合っていますし、イランとロシアは共にインドや中国に石油を輸出する競合相手です。
それにソ連時代には、ロシアはイランに侵攻した歴史もあります。
あるいは中国は、ロシアと北朝鮮の結びつきが強くなることに対してあからさまに嫌悪感を示しています。
とはいえ、この4カ国は、「米国が主導する欧米型グローバル秩序を弱体化させたい」という点で利害が完全一致しています。
米国には冷戦後のように「一国で世界秩序を形成する…」という意思も力も失せました。
ゆえに世界は今、米国が主導する欧米秩序と、その秩序を覆そうとするリビジョニスト国家勢力とに二分されていく過程にあるように思えます。
むろん、勢力のニ分化は地政学的にも不安定要素となります。
こうした国際情勢の変化に対応するため、我が国は我が国で相応の国内体制を整え、新秩序への準備と定礎の観点から外交戦略と防衛戦略を組み立ていかなければならないと思います。