6月に閣議決定される「骨太の方針2024」をめぐり、政府与党では緊縮財政派と積極財政派のせめぎあいが続いています。
自民党の有志議員たちで結成されている『責任ある積極財政を推進する議員連盟』は、「骨太の方針」からPB黒字化目標を破棄すること、そして別途の財政健全化目標を立てる際には建設国債による投資を歳出から除外することを提言するらしい。
また、自民党政務調査会の財政政策検討本部もまた、「来年度のPB黒字化目標は断固反対!」及び「投資系の支出はPBから除外すること」を提言しています。
財政政策検討本部の本部長は、なにより積極財政派の西田参議院議員ですので「責任ある積極財政を推進する議員連盟」と呼応した動きなのだと思われます。
とはいえ、国であれ地方であれ、積極財政派は常に劣勢です。
財務省とメディアが結託して「日本は借金大国だぁ」とやっていますから、そもそも世論が積極財政の必要性を理解できていませんので仕方ありません。
残念ながら政治の世界は、正しいのか正しくないのかで政策は決まらず、どちらのほうが政治的パワーが強いかで決まります。
安倍元総理が未だご存命のころもそうでした。
あのときも党内の積極財政派と緊縮財政派(自民党の財政健全化推進本部)が真っ向から衝突していましたが、最終的には安倍(元総理)、麻生(副総裁)、額賀(財政健全化推進本部長)、西田(財政政策検討本部長)の4人が話し合って玉虫色で決着されました。
総理を辞任した後に積極財政派に転じた安倍元総理が例のテロでいなくなってしまったことは、積極財政派にとっては大きな政治的ダメージとなりました。
そのせいなのか、今年度(令和6年度)予算総額は前年度よりも少なくされています。
コストプッシュ・インフレで物価が上昇しているにもかかわらず総額が減らされましたので、どちらかというと今は緊縮財政派が主導権を握っている状況にあるといっていい。
当該ブログでは繰り返しになりますが、ことしの財政議論は実に重要な局面を迎えています。
その理由は以下の3点です。
第一に、「骨太の方針」で嵌められてきた「社会保障支出以外の政策経費の伸びは年間で333億円まで…」という上限規制が今年で切れること。
第二に、PB黒字化目標の達成期限(むろん、達成できなくてよい)が来年度に迫っていること。
第三に、特例公債(赤字国債)法の期限が来年度に迫っているため、来年度に新たに法律を通さねばならないこと。
こうしたなか、財務省はPB黒字化目標よりも更に厳しい健全化目標を「骨太の方針2024」に嵌め込もうとしているらしい。
日銀への利上げ圧力がかかっているのは、そのためです。
利上げにより、政府の利払費が嵩んでいることを世間に強調したいわけです。
ゆえに、もっか国内で繰り広げられている「利上げするのか、それともしないのか…」という議論もまた、緊縮財政派と積極財政派の代理戦争です。
デフレが払拭されないままでの利上げなどとうていあり得ない話なのですが、為替相場が円安にあることもあって「利上げもやむを得ず」の世論が少なからずも形成されつつあります。
ここでもまた「政策の正しさ…」は無視されます。