減税というアクセル、消費税というブレーキ

減税というアクセル、消費税というブレーキ

6月から所得税と住民税の定額減税がはじまります。

きのう参議院では決算委員会が開かれ、鈴木財務相は「複数年度にわたって(定額減税を)実施するとは考えてない」と述べ、1回かぎりの減税であることを強調しました。

定額減税については、与党内からも「経済情勢によっては来年も実施すべきだ」という意見が上がっていますが、鈴木財務相としては、あくまでも「デフレマインドを払拭するため一時的な措置」としています。

ただ、与党の2024税制改正大綱には「必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する」と明記されておりますので、わずかながらも延長に含みを持たせています。

5月26日の参議院決算委員会では、自民党の木原議員が「仮に物価の状況が改善せず、またデフレに戻る可能性があれば、来年だって考えないといけない」と発言されていますが、この程度の定額減税でデフレが払拭されると本気で考えているのでしょうか。

そもそも減税された分が、そのまま全て消費にまわるわけでもないですし、仮にまわったとしてもデフレギャップを埋めるほどの規模とはとうてい思えません。

本気でデフレギャップを埋めたいのであれば、政府が直接的に実需をつくるか、消費税を廃止したほうが遥かに効果が高いはずです。

加えて、保険や年金などの社会保険料負担を引き下げたら更に効果的です。

といっても、いまの政府与党体制では絶対にやらないでしょう。

残念ながら、私の見立てでは、現在の国会議員の中で正しい貨幣観をもっている議員が占める割合はわずか5%以下です。

鈴木財務相を含むほとんどの国会議員は貨幣とは何か、税とは何かを正確に理解していません。

例えば、税というものは、政府支出の財源を確保するための手段ではなく、国民経済を望ましい姿にするための政策手段であると理解すべきです。

ご承知のとおり、所得税や住民税には所得格差を是正したり、景気を調整したりする役割(スタビライザー機能)があります。

また、税には「増えると望ましくないものに課す」ことで、その量を減らすという効果もあります。

炭素税などが典型ですが、二酸化炭素の排出に対して税を課税することで、その排出を抑制し、地球温暖化を抑止します。(CO2が地球温暖化の原因かどうかはまた別の議論…)

たばこ税は、たばこに課税することで、喫煙の量を減らし、健康被害を軽減するという政策手段になります。

それと同じ様に、消費税には、残念ながら実体経済において消費を減らす効果があります。

いわば、消費に対する罰則税です。

愚かにも我が国政府は、1997年以降、日本経済は一貫してデフレ状態であるにもかかわらず、1997年に3%から5%へ、2014年には8%へ、2019年には10%へと消費税率を引き上げ続けて、消費を抑制してきたのです。

たとえ減税というアクセルを踏んだところで、消費税という強いブレーキを踏み続けているのですから、タイヤは煙を上げて空回りするばかりです。

そもそも、一時的な定額減税で払拭されるほど、デフレは甘くない。

どうしても消費税に手をつけたくないのであれば、前述のとおり政府自らが財政支出を拡大して相応の実需をつくるべきです。

むろん、その財源は新規国債の発行で。