日本国民よりも米国の利益が優先される政治

日本国民よりも米国の利益が優先される政治

今から34年前の1990年といえば、私は大学2年生でした。

前年の1989年にベルリンの壁が崩壊し東西冷戦に終止符が打たれたのですが、ある授業で担当教授が「数十年後、あの年(1989年)が大きな転換点だった…といわれることになるだろう」と言ったのをよく覚えています。

その言葉どおり、翌年の1991年にはソビエト連邦が崩壊するとともに、1989年の東京株式市場大納会で最高値を更新した日本経済もまたバブルがはじけています。

とりわけソ連については、既に80年代から共産主義の行き詰まりをみせており、政情不安と国民生活の貧困化は明らかでした。

その貧困具合といえば、テレビは白黒のままで、洗濯機も掃除機もない家庭が多くあったほどです。

ソ連の中心部であるモスクワであっても、自家用車を持つものは少なかったという。

その中でも最も深刻だったのは、なんといっても食料不足でした。

当時のテレビ映像によってわずかに記憶に残っていますが、モスクワでさえ売店の棚がスカスカで何もなく、食料品を買うためには極寒の中、1〜2時間も並ばなければならないという状況でした。

ソ連崩壊の後、ロシアになって初の大統領となったのがボリス・エリツィンです。

エリツィンはソ連の失敗を糧に「ロシア復活」を国民に強く訴えかけつつ、西側諸国でうまくいっているといわれる「民主主義」をロシアに取り入れることを宣言します。

この宣言で塩梅よく国民からの人気を集めることに成功した彼は、みごと選挙で大勝利をおさめ、初代大統領に就任したわけです。

ところが、エリツィンに大きな期待を抱いたロシア国民たちは知りませんでした。

この男が米国の手先になってロシアを裏切ることを…

エリツィンが大統領になって間もないころにはロシア市場が開放され、一時は国民生活が豊かになったかのようにみえました。

ですが、数年もしないうちに街には失業者が溢れました。

しかも、GDPがたった数年で半減するという酷い有り様です。

国民が手にする通貨の価値が暴落し、パン一切れを買うのにも困難を極め、食料を手に入れられなくなった人たちは次々と餓死していきました。

そんななか、ロシア政府は「民間の自由な競争」という名のもとに医療制度を解体しはじめます。

当然のことながら、病気にかかった国民は医者に行くこともできず、薬さえもらえないという状況に追い込まれます。

また、とどめを刺すかのようにエリツィン大統領は年金の支払いまでをも止め、国民の収入源を絶ったのです。

結果、なんと何百万ものロシア人が餓死し自殺したといいます。

基本的な経済システムが整っていないところで、急激なる市場原理が導入されたのですから、ロシアの国民経済が破壊されるのも当然です。

さて、どうしてエリツィン大統領はこのような悪政をおこなったのでしょうか。

これには、当時の米国クリントン政権が関係しています。

クリントン政権はロシアのエリツィン政権に経済政策のブレーンを紹介したのです。

そのブレーンとは、例えばハーバード大学の教授であったり、ゴールドマン・サックスの関係者であったり、あるいはジョージ・ソロスです。

彼らの手口はあまりにも巧妙でした。

まず、エリツィンがロシア大統領に就任して直後、クリントン米大統領から次のように言われます。

「我々の援助が欲しければ言う通りにせよ。もし断れば援助は打ち切る」と。

この米国の圧力に、エリツィンは簡単に屈します。

とりわけ、そしてハーバード大学やゴールドマン・サックスらが策定した「ショック・セラピー」といわれる経済改革をエリツィンは断行し、ロシア政府が保有していた資産や天然資源を本来の価格のおよそ50分の1という法外な安値で米国資本に売り出したのです。

それら破格の値付けをされた資産は、ゴールドマン・サックスのような金融機関ほか、米国の資産家が一気に買い占めることになりました。

むろん、不正な売買が明るみにならないように、マネー・ランドリングを経てから米国に持ち出されたのでございます。

その金額はなんと65兆円ちかくにまで及ぶともいわれています。

因みに、こうして強奪された莫大なロシアの資産の一部が、米国大手メディアにも流れ込んだともいわれています。

現在のプーチン大統領が、米国をはじめ西側諸国とその資本家たちに大いなる不信感を抱いているのはこのためです。

私たち日本人とって、これらのことは対岸の火事ではありません。

例えば、郵政民営化をはじめ、改正水道法(水道事業民営化法)のほか、4月17日に成立したる改正NTT法もまた、米国が日本に求めるショックセラピーであると言っても過言ではないのですが、残念ながらこのことに対して警鐘を鳴らす日本の政治家は少ない。

米国様の利益のために日本国民の命がすり減らされていくことに、あなたは耐えられますか。