ことし令和6年は、医療報酬、介護報酬、障害者福祉報酬の3つの報酬改定が重なりました。
医療と介護についてはさほど大きな変更はなかったものの、とりわけ障害者福祉については特筆すべき点が多い。
障害者福祉サービス等報酬の全体改定率については、プラス1.12%が維持されて基本報酬は上がったものの、個別のサービスをみていきますと、加算の考え方が大きく変更されているなどして、実質的には報酬減になってしまうサービスもあります。
例えば、障害者通所支援や生活介護については時間の長さ短さによって報酬が変わるようにされたほか、就労支援については「生産活動収支」にこれまで以上にフォーカスが当てられ、上がっているところはともかく、下がっているところはマイナス点がつけられることになりました。
とりわけ、就労支援事業のA型を担っている事業所からは、「このままでは事業継続が難しい」という悲鳴も聞こえています。
要するに、報酬の改定率をプラスにしつつも、国の実質的な歳出をできるだけ増やさないようにするために、個々の事業サービスで定義を変えたり、加算基準を変えたりするなどの小細工がかいまみえます。
にもかかわらず、国では次回(令和9年)の報酬改定にむけて、すでにマイナス改定が議論されはじめています。
驚くなかれ、その議論が福祉を所管する厚労省ではなく、財務相の諮問機関である「財政制度審議会」において行われています。
ご承知のとおり、財政制度審議会は「財政健全化にむけた提言」を取りまとめるための機関であり、いわば、緊縮財政に錦の御旗を与えるために拵えられた、財務省の都合盛り機関です。
そこでもう既に、次の法改正と報酬改定に向けた意見提言が行われているのでございます。
4月16日の財政制度審議会(分科会)では、障害者福祉に関する意見提言は盛り込まれなかったのですが、まずは介護の分野が先行的に議論され、以下の9つの意見提言がなされました。
①人員配置基準のさらなる緩和
②介護事業者の協働化と大規模化の推進
③保険外サービスのさらなる活用と促進
④介護保険の指定を受ける施設と、受けぬ高齢者向け住まいとの役割分担
⑤人材紹介会社に対する規制強化(ピンハネの防止強化)
⑥多床室の室料負担の見直し(負担増)
⑦利用者の負担割合の見直し(負担増)
⑧ケアマネの利用者負担の導入
⑨軽度者に対するサービスの支援事業への移行
といって、これらは以前から提言されていたもので、目新しいものはなく改めて盛り込まれたにすぎませんが、⑤以外は悉く「歳出削減」あるいは「国民負担の増」のための改革です。
やがては障害者福祉についても、今年の年度末までに提言がまとめられる予定です。
このように我が国では、財政健全化の名のもとに介護や障害者福祉が論じられています。
今は未だ、序章にすぎません。
何度でも言います。
財政論に陥ったら政策論は負けです。