お粗末な質問と答弁

お粗末な質問と答弁

昨日(令和6年5月21日)開かれた定例閣議では、立憲民主党の櫻井衆院議員が提出していた「デフレ脱却担当大臣の廃止とインフレ対策担当大臣の設置に関する質問」への答弁書が閣議決定されました。

櫻井衆院議員の質問趣旨は、「現今日本の経済状況はインフレではないか…」というものです。

その根拠は、消費者物価の上昇率が3年連続で物価安定目標の2.0%を上回っているから…としています。

ゆえに櫻井氏は、鈴木財務大臣が兼任しているデフレ担当大臣を廃止し、インフレ担当大臣を設置すべきだろ…と主張しています。

それに対して岸田内閣は「デフレ脱却の判断には至っていない」と答弁しています。

閣議決定された答弁書では、「消費者物価は緩やかに上昇しているが、日本経済は再びデフレに戻る見込みがないという判断には至っていないため、引き続き様々な指標を丁寧に確認しながらデフレ脱却の判断をする」としています。

この立憲民主党の櫻井氏と岸田内閣のやりとり、皆様はどのようなご感想をお持ちになられるでしょうか。

要するに、櫻井氏は「もうデフレじゃねえだろぅ!」と質問し、それに対して岸田内閣は「またデフレに戻らないとは判断していない!」と答弁する。

結論から言うと、質問する側も答弁する側もともに、インフレには、①コストプッシュ型、②デマンドプル型の二種類があることを前提としていないことが大問題です。

とくに立憲民主党の櫻井氏については、「消費者物価(コアCPI)が3年連続で2.0%を上回っているからデフレを脱却している」と言い切ってしまうお粗末さ。

そもそも消費者物価には、コアCPI(生鮮食品を除いた総合消費者物価指数)のほか、総合消費者物価から天候や市況など外的要因に左右されやすい食料とエネルギーを除いたコアコアCPIがあります。

今の日本は為替の影響などなど輸入物価が上昇しているんですから、コアCPIが3年連続で2.0%を上回るのは当然で、これをもってデフレ脱却と判断するのはそうとうのヤブ医者ですよ。

ただ、この1年間、コアコアCPIも2%を超えているのは事実です。

しかし、それでもデフレ脱却とは言えません。

なぜなら、コアコアCPIは高騰している輸入エネルギーの価格を除外しているのですが、それによって国内で商品が生産され流通される過程において、どうしてもエネルギー価格上昇の影響を受けてしまうからです。

ご承知のとおり、私たち消費者が購入する商品ほとんどは、ナフサなどの原油が使われています。

例えば、スーパーマーケット等で購入するお魚やお肉の包装パックだって、元をたどれば原油ですし、あるいはスーパーマーケットまで商品を運送するトラックの燃料もまた石油です。

こうしたものの値上がりが、どうしてもコアコアCPIにも反映してしまうわけです。

統計なるものは完璧ではありません。

それに加えて、昨今では生産年齢(15〜64歳)人口比率の低下に伴う人手不足による影響も加わっています。

といって、実質賃金は目下24カ月連続のマイナスです。

実質賃金が下がり続けたままデフレを脱却することなどあり得ないでしょうに。

そもそも、2024年の第1四半期(1〜3月期)の実質GDPはマイナスです。

よって、日本経済は今、デフレとコストプッシュ型インフレとが併存している状況にあると診断されるべきです。

その点、「またデフレに戻る可能性を否定できない…」などと答弁する岸田内閣もまたヤブ医者と言わざるを得ません。

この国のヤブ医者政治はいつまで続くのか…