政府支出を拡大すると経済が成長する

政府支出を拡大すると経済が成長する

ことし2月29日に開かれた「財政諮問会議」において、2060年度までの長期経済試算が示されました。

因みに財政諮問会議とは、内閣総理大臣の諮問に応じ、財政運営や予算編成の基本方針、そのほか経済財政政策に関する事項について調査審議することを目的とした、内閣設置法に基づく合議制機関です。

議長は、岸田総理。

ほか議員は、林官房長官、新藤内閣府特命相、松本総務相、鈴木財務相、齋藤経産相、上田日銀総裁、住友化学の十倉会長、BNAパリバ証券の中空氏、サントリーの新浪氏、東大の柳川教授で構成されています。

さて、その財政諮問会議が、2060年度までの平均成長率を0.2〜1.7%と試算しています。

資料をみますと、試算の前提条件には、①労働参加率、②出生率、③TFP(全要素生産性)上昇率の3つが挙げられていますが、最も重要となる「政府歳出の伸び率」が加味されていません。

それどころか、「医療や介護の費用が膨らむ中、財政の安定に向けて、歳出改革の徹底や成長率の引き上げに集中して取り組む必要がある」などとしています。

悲しいかな財政諮問会議のメンバーたちは、政府歳出の伸びと経済成長率には相関関係があることを知らないらしい。

上のグラフをみてのとおり、政府歳出の伸び率とGDP成長率の伸び率には相関関係があります。

グラフは名目GDPでみていますが、これを物価の影響を除いた実質GDPでみた場合であっても、ほぼ同じ相関グラフになります。

おそらくは総理大臣以下、財政諮問会議の誰一人として理解していないことだと思いますが、資本主義の下では政府が貨幣を創造して供給しています。

具体的なオペレイトとしては、政府が国債を発行することで貨幣を創造し、それを政府が支出することで実体経済に貨幣を供給します。

デフレにより民間企業の投資意欲(おカネを借りようとする意欲)が収縮しているなか、政府までもが歳出を引き締めてしまうと貨幣は供給されず、ますます以って経済はデフレ化します。

恐ろしいことにそれは、この27年間、実際に日本で起きたことです。

GDPとは政府支出と民間支出に純輸出を足し合わせたものですので、政府が支出を拡大すればGDPが増えるのは当然のことです。

逆に、国債を発行せず(貨幣を供給せず)、増税や歳出改革によって財源をひねり出して支出するという財政運営をしていると、封建社会がそうであったように経済は成長しません。

江戸時代もそうです。

金山を掘り尽くした徳川幕府が貨幣発行を増やせなくなったことで経済が停滞しはじめました。

ゆえに、8代将軍以降の江戸経済は一貫してデフレです。

因みに、緊縮財政派に上のグラフをみせると「財政支出を拡大したから政府支出を伸ばすことができたのだ…」などと寝言を言ってのけます。

むろん、その論理には無理があります。

なぜなら、不況で経済成長率が鈍化したときこそ、景気対策のために財政支出を伸ばしているからです。

もしも「経済成長しなければ財政支出を拡大できない…」と言うのなら、そもそも景気対策などできないではないか。

政府は歳出が先であって経済成長は後からです。