新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株について、私の知る医師や専門家たちは「極めて危険な変異ウイルスだ」と言っています。
従来型に比べて感染力も高いらしい。
さらに危険なのは、例えば米国のように、生活規制にうんざりした多くの人々が「もうパンデミックは終わった」と思い込んで予防措置を怠ることだという。
イギリスではワクチンの接種率は高いものの、一部地域でデルタ株の感染者が増えたこともあって場所を絞って検査件数を増やしたり、改めてワクチン接種の呼びかけを強化しています。
欧州南部でも状況は厳しいらしく、例えばスペインなどは夏休みに観光客を呼び戻そうとしていますが思惑どおりにはいかないようで、世界各地でデルタ株の影響が出ているのは明らかです。
そこで気になるのは、ワクチンがデルタ株に充分な効果があるのかどうかです。
これまでの研究の結果、とくにmRNAワクチンの効果が確認されています。
イギリス政府の調査によると、ファイザーとビオンテックのワクチンを2回接種すれば入院リスクを96%予防できるという結果がでています。
モデルナも2回の接種でデルタ株に対する抗体ができると6月29日の段階で発表しています。
オックスフォードとアストラゼネカのワクチンについても入院リスクを92%予防できるとされており、むろんこれも2回接種した場合の数字です。
即ち、これらの数字はすべて、mRNAワクチンについては必ず2回接種することの重要性を示しています。
1回の接種で大丈夫だと思い込んではいけないようです。
因みに、川崎市においても、本市所管当局は個別接種会場となっている各クリニック(診療所)に対し、1回目の接種を行った際には必ず2回目の接種予約を受け付けるように指導をしているところです。
ところが、中には不届きなクリニックがあり、なんと予約なしで1回目を接種し「2回目の接種は責任をもてません」と言って予約を受け付けないケースがでています。
これは医療機関としてのモラルハザードというより、れっきとしたルール違反です。
そんなことをされてしまうと、川崎市内に多くの「2回目難民」が発生してしまうことになります。
明らかにカネ儲け主義で接種業務を請け負っているクリニックとしか思えません。
当該クリニックに対しては川崎市の所管当局から厳しく指導をさせたところです。
話を戻しますが、12歳未満の子供については未だワクチン接種を受けることができません。
このことがどのような影響を与えるのかも当然のことながら気になるところです。
ご承知のとおり、現在、12歳未満の子供を対象にmRNAワクチンの臨床試験が行われている段階にあります。
ゆえに、ワクチン接種が受けられずデルタ株の感染力も高いことから、今年のはじめに比べて症状が出ている子供が増えています。
なので子供たちには引き続き、マスクの着用やソーシャルディスタンスなどの予防対策の強化が必要となります。
デルタ株に対する免疫を持っていないわけですから仕方ありません。
一方、問題は7月23日から開会される東京五輪です。
観客を入れるのか入れないのか。
大谷選手が活躍するメジャーリーグのスタジアム観戦では、ワクチン接種済みエリアではマスクの着用義務がないようで、かつ接種証明(ワクチン・パスポート)がないと入場できないとのことです。
ワクチンの効果は100%ではありませんが、身を守るには最も重要かつ効果的な手段であると認識されての措置なのでしょう。
イベントを開催するにあたってリスクを最低限に抑えるためには、徹底的な検査をするか、もしくはワクチン接種証明を必要とするかなどの措置が必要なのかもしれません。
専門家たちの意見を総括すると、やはり日本(東京五輪)の場合、デルタ株の感染力を考えると観客を入れるにはリスクが高いようです。
その理由の第一は、我が国のワクチン接種率が先進諸国のなかでも極めて低くなっていることです。
既に接種率が116.5%(7月5日時点)に達しているイギリスのように、例え接種率の高い国であってもデルタ株の感染者が拡大していますので当然のことかと思われます。
それでもイギリスでは、今月の19日に新型コロナ対策の規制がほぼ撤廃されます。
それに8月16日からは、ワクチンを2回接種した成人、及びワクチン接種が行われていない18歳未満は、コロナ陽性者との濃厚接触が判明しても自己隔離する必要はなくなるとのことです。
ジャビド保健相は「ワクチン接種のおかげで新型コロナによる死者数は前回のピーク時に比べて30分の1にすぎない」と述べています。
確かにイギリスでは、集中治療室(ICU)に入るような重症患者の数が減っています。
上のグラフのとおり、ピーク時には人口100万人あたりで60人に達していましたが、今は4人程度に抑え込まれています。
ジョンソン首相は「新型コロナウイルスはインフルエンザのように対応できるようになった」と自信をみせています。
さて、東京五輪にとって参考にできそうなのが、日本時間の今日未明からはじまったヨーロッパサッカー選手権の準決勝、そして週末の決勝戦です。
そこで重症患者がでるのかどうか…
今となっては東京五輪開催の是非を論じても仕方のないことです。
開催すると決まった以上、国家の威信にかけて完璧に開催してほしいと思います。