先日、「日本酒1日1合、大腸がんの危険 厚労省が飲酒指針」という新聞記事をみました。
昨年11月に厚労省が発表した『飲酒指針』(健康に配慮した飲酒に関するガイドライン)についての記事だったのですが、ガイドラインを読んでみますと、直接的に「日本酒を1日1合飲むと…」とは記載されていません。
ガイドラインに記載されているアルコール量を日本酒に置き換えると「そうなりますよね…」という記事でした。
たしかにガイドラインを読むと、そのように表現されています。
しかしながら、もしこれを読んで「日本酒を1日1合飲むと大腸がんになる危険が…」と思った人は、少し冷静になったほうがいい。
こういうときにこそ、国民の情報リテラシーが求められるのだと思います。
そもそも、これは確率現象の問題です。
1日1合の日本酒を飲む人が何人いて、大腸がんになるリスクはどのくらいの割合なのか?
1日2合の日本酒を飲む人に比べて、どれだけリスクが低いのか?
お酒を飲まない人に比べて、どれだけリスクが高いのか?
というように、確率表現しかできないはずです。
あるいは、お酒を飲まない人でも大腸がんになる人もいるわけですが、そういう人々は何年後にどのぐらいの割合で大腸がんになっていて、その人たちと比較した上で、1日1合のお酒を飲むことが統計上の「明らかに意味のある差」(有意差)を生んでいることが証明されないかぎり、「日本酒を1日1合飲むと大腸がんの危険…」などという表現はできないはずです。
要するに、確率現象であるはずなのに確率表現を使えていないという話です。
さらに言えば、たとえ有意差が証明されたとしても、それをもって因果関係を証明したことにはなりません。
仮に統計的に有意な相関関係があったとしても、それはあくまでも必須条件であって、十分条件ではないからです。
ましてや統計上の有意差判定すらできていないわけですから、「日本酒1日1合、大腸がんの危険」は、ほとんど意味をなさない表現だと言わざるを得ません。
記事も酷いものですが、現在の厚労省に対しても「統計を理解できる人材がいないのか…」とさえ思えてきます。