IMF(国際通貨基金)の最新予測によれば、世界経済の成長率は2029年までに3%をわずかに超える水準まで低下するとのことです。
世界経済の成長率は2008年〜2009年の世界金融危機以降は着実に減速しており、しかも今後は裕福な国とそうでない国の間で景気減速にばらつきが出るために世界的な所得収斂の見通しが暗くなるという。
結果、生活水準の改善が逆行する恐れがある、としています。
因みに、私が赤ちゃんのころの世界経済成長率は4〜6%もありました。
ご承知のとおり、コロナ・パンデミック克服のため、欧米各国の政府は財政拡大路線に転じました。
それにより、ようやく世界的な長期停滞から抜け出すことができるかと思いきや、今度はコストプッシュ・インフレに慄きすぎてか、米国がそうであったように世界中の中央銀行は金融政策の引き締めに舵を切ってしまい、再び世界経済を長期停滞の道に戻しつつあるようです。
米国が典型でしたが、インフレといっても、どの部分がコストプッシュ型で、どの部分がのデマンドプル型だったのかが極めて重要なはずで、それを見極めたうえで慎重に利上げを検討すべきだったと思いますが、とにかく当局は「インフレだから利上げ」という四角四面な発想しかなかったようです。
さて、IMFは「政策介入と新技術の活用がなければ、過去のような高い成長率は戻って来ない…」と警鐘を鳴らしていますが、さすがに「政策介入とは財政政策である…」という言及はしていません。
何と言ってもIMFは緊縮財政の巣窟ですから。
とはいえ、「新技術の活用がなければ…」と、技術革新による生産性向上の必要性を指摘している以上、政府なり民間部門が投資をしなければならないはずです。
とりわけ日本のようにコストプッシュ型インフレとデフレが併存している経済状況では、政府による需要創造が欠かせません。
需要が拡大しない経済情勢において「さらなる投資」を行う企業など存在しません。
思い起こしてほしい。
第二次世界大戦前に停滞に陥っていた経済が戦後になって高度成長を実現し得たのは、なによりも政府が支出を拡大して完全雇用を目指すようになったからです。
むろん、令和の日本は人手不足経済であることから、今度はそれを解消するために官民を合わせた新たな投資が必要になります。
そもそも資本主義というものは、政府の財政的介入なしでは持続可能な経済成長を達成することができないのでございます。
政治家であれ、役人であれ、政策担当者はそのことを肝に銘じるべきです。