収支均衡と財政破綻

収支均衡と財政破綻

小泉内閣以来、我が国の政府は毎年6月になると『骨太の方針』を発表します。

骨太の方針とは、ときの内閣が「政権としての重要課題」や「翌年度予算編成」の方向性を示すものです。

ちなみに『骨太の方針』は正式名称ではなく、正式には「経済財政運営と改革の基本方針」という名称です。

ことしもまた6月の発表にむけて、『骨太の方針』の議論がいよいよ盛んになってくる時期を迎えました。

さて、『骨太の方針』を法的根拠としてきた「プライマリー・バランス(基礎的財政収支、以下PB)目標」については、2025年度に黒字化することを目標としてきましたが、むろん達成は不可能です。

(不可能というより、達成させるべきではない)

これを『骨太の方針2024』のなかで、どのように料理するつもりなのでしょうか。

加えて来年度(2025年度)は、赤字国債を発行するために国会で通している「特例公債法」の期限が来ます。

よって、2025年度には新たな特例公債法を通さねばなりませんので、緊縮財政を省是とする財務省としては、2024年度の財政議論は極めて重要になります。

なお、『骨太の方針2015』以来、上限キャップをはめられてきた「社会保障費以外の政策経費の伸びは一年間で330億円まで…」という制約も2025年度に期限を迎えます。

なので財務省としては、PB黒字化に代わる新たな財政規律を『骨太の方針』に入れてくるはずです。

それはおそらく「PB(基礎的財政収支)の黒字化」から「財政収支の黒字化」への目標転換です。

ご承知のとおり、「PB」と「財政収支」は異なります。

PBは、税収と政策経費をバランスさせろ…というものでしたが、財政収支の場合は税収と「政策経費+利払費」をバランスさせろ…というものです。

しかしながら、そもそもPBと財政破綻の間には何の因果関係もありません。

例えば、アルゼンチン、ギリシャ、レバノンは既に財政破綻(デフォルト)を経験していますが、これらの国々のPBの対GDP比率は平均するとほぼゼロ%で極めて安定していました。

一方、日本のPB対GDP比は平均すると概ね5%で、日本のほうが断然に悪い数値ですが、ご承知のとおり我が国は一度もデフォルトなどしていません。

当たり前です。

日本は変動相場制を採用できる自国通貨国だからです。

アルゼンチンやギリシャは自国通貨建てで国債を発行できませんし、レバノンは国内供給能力の脆弱性から変動相場制を維持できません。

要するに、破綻するかしないかは、ただそれだけの違いでありPB指標とは無関係です。

むろん、利払費を含めた財政収支にしても同様です。

財政収支が赤字であろうが黒字であろうが、変動相場制を採用できる自国通貨国である日本が財政破綻(デフォルト)することなどあり得ません。

恐ろしいのは、財政収支の黒字化というPB目標よりももっと厳しい財政規律が設定されることで、現在よりもさらに緊縮財政が強化されることです。

生産年齢人口比率の低下する日本においては、生産性向上のための各種投資が求められています。

このまま政府が緊縮財政を続けてしまうと、そうした投資を呼び起こすことができません。

それ即ち国内供給能力の低下であり、我が国の発展途上国化を意味します。