この10年間、政府税収の対GDP比率が上昇しています。
政府税収の対GDP比率を「国民負担率」と呼ぶ人もおられますが、税収(租税)は財源確保の手段ではありませんので厳密には「負担率」とは言い難い。
いつも言うように、租税の目的の一つはインフレ率の調整なので、国民負担率というよりは「貨幣回収率」と言ったほうが的確ではないでしょうか。
貨幣は主として政府の財政支出と民間銀行の貸出によって供給されます。
それら貨幣供給量に対し、もしも国内でのモノやサービスをつくる力が弱ければインフレ率は上昇しますが、強ければインフレ率は上昇しません。
インフレ率が過度(例えば10%以上)に上昇した場合、明らかに貨幣供給の過剰と言っていいでしょう。
そうならないように、政府は徴税することで貨幣を回収しています。
しかしながら、ご承知のとおり我が国のインフレ率(コアコアCPI)はゼロ%で推移し続けています。
にもかからず政府税収対GDP比率が上がり続けているということは、どうみても貨幣を回収し過ぎています。
上のグラフをよくみると、政府税収対GDP比は小泉内閣以降から既に上がりはじめています。
日本経済は「バブル崩壊」と「政府による緊縮財政」の合せ技によって1998年にデフレ経済に突入しました。
デフレに突入したからには消費税を廃止するなど何らかの減税措置を採って貨幣回収量を減らすべきでしたが、それとは反対に我が国政府は消費税率を引き上げ続けたのです。
自然、民間部門の投資も消費も縮小してしまいました。
よって、さらにデフレは深刻化し、政府税収対GDP比率の分母となるGDPも増えません。
要するに政府部門がひたすら黒字化をめざしているのですから、その分、民間が赤字になるのは必然です。
つまり我が国は今…
政府部門の黒字化 → 民間部門の赤字化 → デフレ化 → 政府税収対GDP比の拡大(政府部門の黒字化)
…という負のスパイラルに陥っています。
何度でも言います。
税収は財源確保の手段ではありません。
政府の国債発行及び財政支出の拡大はただ単に貨幣供給量を拡大しているに過ぎず、逆に政府部門の黒字化(貨幣回収)の拡大は国民を貧しくするだけです。
少なくとも政府は、政府税収対GDP比率がデフレ突入以前の水準に回復するまで減税をし、インフレ率が2~3%に達するまで歳出(貨幣供給)を拡大すべきです。