財務省が日銀に利上げを求める理由

財務省が日銀に利上げを求める理由

我が国の財政は、愚かにも『骨太の方針2015』及び『骨太の方針2018』により、社会保障支出以外の政府歳出の伸びを3年間で1,000億円までとする、という上限キャップが嵌められています。

その縛りが、2025年度に切れます。

また同時に、赤字国債を発行する際に通した特例公債法の締めが2025年度となっているため、プライマリー・バランス(以下、PB)黒字化目標の期限が同年度となっています。

といって2025年度のPB黒字化など到底不可能ですが、とにかく来年度(2025年度)は、新たに特例公債法を通さなければならないこと、また何かしらの「上限ギャップ(財政規律)」がはめられることになるでしょう。

むろん、これらの議論は2024年度内(ことし4月から来年3月まで)に行われることになりますので、4月以降の財政議論が極めて重要になります。

因みに、仄聞するところによると、さすがの財務省も「2025年度のPB黒字化」は諦めているらしい。

諦めているらしいのですが、もしかすると財務省はPB黒字化目標よりもさらに厳しい財政規律を設定してくる可能性が高いということです。

PBとは、社会保障や公共事業など、各種の行政サービスの経費(政策的経費)を、税収等で賄えているかどうかを示す指標です。

つまり、政策経費(歳出)=税収(歳入)、これがPBがバランスした状態です。

ただし、ここでいう歳出には過去に発行した国債の元金返済と利払い費は含まれませんし、歳入には新たな国債発行による収入も含まれません。

これに対し、政策経費だけでなく「利払い費」を含めた歳出を、税収(歳入)とバランスさせようとするのが財政収支のバランスです。

なんと財務省は、PBの黒字化から財政収支の黒字化に目標を変更しようとしているらしい。

ここに財務省の狡猾さが顕れているのですが、利払い費の想定は財務省が恣意的に決められることです。

例えば、「来年度の国債金利は〇〇%になりますよ…」と財務省が決めることが可能です。

因みに、直近(現実)の利払い費(利率)は0.75%ですが、2024年度の利払い費(利率)は、1.9%と極めて高く設定しています。

つまり、財務省が利払い費を高く設定すればするほど、財政制約は厳しくなり緊縮財政になっていくわけです。

なるほど、ここのところ財務官僚たちがことさらに「日銀は利上げをすべきだ…」と主張している背景には、こうした目論見があったのですね。

あまりにも現実離れした高い利率を想定して予算を組むわけにはいかないからです。

信じ難いことかもしれませんが、そこまでするのが財務省です。