ロシア・ウクライナ戦争が勃発してから先月で2年が過ぎました。
ロシア優勢のまま戦闘が続いていますが、ご承知のとおり戦闘終結の見通しは立っていません。
ウクライナは軍事面・経済面において欧米諸国の援助を受けているものの、この戦争はウクライナにとっては全面戦争である一方、ロシアにとってはあくまでも局地戦に過ぎず、すでに戦闘の主導権はロシア側にあるとみていい。
プーチン大統領が望む一定の条件が満たされないかぎり、ロシア軍が妥協的撤退をする可能性は少ないものと推察します。
さて、米国のシンクタンクである『アメリカン・エンタープライズ研究所』のハル・ブランズ氏が実に興味深いことを言っています。
「世界は、1940年代のように、複数の紛争が一つの戦争へと統合されていく局面にあるのかもしれない」と。(出典:フォーリン・アフェアーズ)
なるほど、東ヨーロッパではロシア・ウクライナ戦争が2年を過ぎ、中東でも紛争が勃発しています。
これに加えて、中共による台湾侵攻が重なれば、ユーラシア大陸の3つの地域で戦争が行われることになります。
もしもそれが一つの戦争へと統合されていくと、なるほど1940年代と同様に「世界大戦」ということになります。
加えて、現状の国際秩序を否定する「リビジョニスト国家」の結びつきも強まりつつあり、ハル・ブランズ氏は「米国は、こうした課題への準備ができていない」ことを憂いています。
国際安全保障の危機は高まるばかりだ、と。
世界は今、ローマ帝国なきあとの地中海世界のように「平和が常態」ではなくなりつつあることは確かです。
こうしたなか、我が国はこれまでGDP比1%以下だった防衛費を、ようやくGDP比2%にまで引き上げることになりました。
引き上げるに至ったのは、自らの思考と意志で「平和が常態ではない」ことを認識したからではなく、おそらくは米国様に言われたからでしょう。
それはそれで情けないことではありますが、この際、それでもいい。
主体的に国際安全保障の一役を担える、いわゆる「普通の国」になることができるせっかくのチャンスです。
政治は、このチャンスを存分に活かしてほしい。
ただ残念なのは、その財源をめぐって政治が迷走していることです。
岸田内閣は、今年度から5年間の防衛費を46兆円にする方針を決定していますが、その財源をめぐって「防衛増税」だとか、「歳出改革」だとか言っている時点で誠に救いがたい。
詰まるところ、為政者たちが「正しい貨幣観」を持たぬがゆえに、せっかくのチャンスを活かせないのでございます。