きのう、東京株式市場で日経平均株価が大幅に反発して前日比744円高の3万9910円となり、3日ぶりに最高値を更新しました。
専門家によれば、3日ぶりに最高値をつけた足元の背景には、米国市場で主要な株式指数が過去最高値をつけたこと、及び日本市場でも半導体関連株を中心に買い注文が広がったことが挙げられるようです。
さて、グラフのとおり、株価はこの1年間で1万5000円も上昇しています。
このことから「日本が長引くデフレから脱却する…」とみている識者たちもおられるようですが、はて?
「デフレから脱却する…」が「景気が良くなる…」という意味であればそれは疑わしい。
株価は必ずしも実体経済の景気を反映しません。
株屋さんの世界では、実体経済と金融経済の棲み分けはなされないのでしょうか。
株式で資産運用されている方にとっては株価上昇は誠に喜ばしいことと存じますが、働くことで所得を稼ぐ人たちにとっては、どんなに株価が上昇しようとも景気がよくなっている実感など微塵も感じられないはずです。
景気がよくなっている実感とは、働くことで所得を稼ぐ人たちが豊かになることで得られる実感のことです。
所得を稼ぐ人たちが豊かになる、ということは即ち、一人あたりのGDPが増えることを意味します。
一人当たりのGDPが増え、企業の労働分配率さえ下がらなければ、間違いなく所得は増えます。
残念ながら、どんなに株価が上昇しようとも、直接的にはGDPの上昇には関係がありません。
むろん、株価で利益を得た人が、何らかのモノやサービスを国内で購入すれば、その分だけGDPが引き上がりますが、たいてい場合、株価上昇で得た利益は、さらなる株式投資に向かうのではないでしょうか。
繰り返しますが、どんなに株が買われてもGDPは1円も増えないのでございます。(証券会社が得る手数料だけは別)
しかしながら、前述の「デフレから脱却する…」が、もしも「生産性の向上と伴わないままに脱却する…」という意味であれば、その可能性はむろん否定できません。
なぜなら、我が国は生産年齢人口比率の低下等もあって人手不足が深刻化していますが、もしも生産性の向上が起きないままにデフレを脱却することになれば、それは間違いなく発展途上国型のインフレであって、政府が積極財政に転じることができない日本は間違いなくその方向に向かっているからです。
少なくとも「株価最高値…」に浮かれている場合ではないことは確かです。