本日は「たばこ税」について。
川崎市議会にも愛煙家の議員がおられ、「もっと分煙対策にカネを使って、喫煙所を増やしてほしい…」という趣旨の議会質問を定期的にされておられます。
その質問の執拗さにいつも議場で苦笑するしかないのですが、ちなみに私は喫煙者ではありません。
現在、川崎市議会では来年度(令和6年度)予算案を審議する3月定例会が開会されています。
予算案をみますと、本市は来年度の「市たばこ税」の歳入を99億円と見込んでいます。
99億円を見込んでいるものの、毎年、分煙対策に使われるおカネはごくわずかなので、前出の議員さんは「何十億円も税収が入っているのだから、もっとカネを使って喫煙所を増やしてくれ…」と市長に訴えているわけです。
一方、国の予算をみますと、たばこ税の歳入は年間で2兆円を超えます。
たばこ税は景気にほとんど左右されませんので、実に安定した税収になっています。
さて、たばこ税が導入されたのは、明治8(1875)年のことです。
現在でもそうであるように、明治政府もまた当然のように「税は財源」と考えていましたので、よく売れるモノに税を課して財源を確保しなければならない、と考えたわけです。
その「よく売れるモノ」の一つが、たばこでした。
明治時代ですから、現在のように娯楽がたくさんありませんでしたので、多くの人が娯楽嗜好品としてたばこを吸っていたのでしょう。
むろん江戸時代にもたばこを吸う人はいましたが、明治時代に入って爆発的に広まり、庶民生活に深く入り込んでいったようです。
そこで明治政府は「これは安定財源になるな…」と考え、税金を課すことになったわけです。
たばこによる税収は明治政府の国家予算(歳入予算)の1割を占めるほどになり、日清戦争の戦費の一部もたばこ税だったと言われています。
明治政府は、たばこの他にも色々なモノに税をかけました。
例えば、塩、砂糖、酒などで、今も残っているのが「酒」と「たばこ」ということです。
ご承知のとおり、たばこの値段は年々高くなっています。
昨今では一箱500円ほどするそうですが、うち400円は税金です。
たばこ作りにかかる費用は、100円ほどです。
たばこ税については財務省と厚労省による政府内対立があるのは周知のとおりです。
厚労省は喫煙を減らし国民の健康を守りたいし、安定財源を求める財務省にとっては喫煙が減ってたばこ税が入らなくなると困るわけです。
なにせ、JTの筆頭株主は財務省ですので。
現代貨幣理論によれば、税にはいくつかの機能があります。
インフレ率の調整、租税貨幣論、所得格差の是正、需給の安定化、特定の政策誘導などなど。
税は財源ではない以上、現代におけるたばこ税は「国民の喫煙を減らす」という特定の政策目的をもった税だと解釈すべきだと思います。
なお、市町村たばこ税は、税制上の目的税ではありませんので、川崎市が分煙対策など「たばこ」に関する事業に99億円を投じる義務はありません。
ありませんが、たばこ税による収入があろうがなかろうが、受動喫煙を防ぐための分煙対策は進めてほしい。
国際的にみても、我が国は国民に占める喫煙者比率が高い国なのですから、分煙対策費が他国に比べて多くなっても不思議ではないと思います。