気がつけば、世界の自動車市場が凄いことになっていますね。
とりわけBEV(100%電気で走る電気自動車)市場、及びPHEV(外部電源利用可能な、エンジンとモーターのハイブリッド車)市場の世界販売台数をみますと、6割ちかくが中国製になっています。(2022年)
例えばPHEVの昨年(2023年)6月時点の世界販売台数でみますと、その上位10車種のうち、8車種は中国製です。
あのテスラ製でさえ、2車種しか上位10位に入っていません。
中国製EVの製品クウォリティについてはよくわかりませんが、とにかく価格競争力を持っていることだけは確かなようです。
ではなぜ、価格競争力を持つようになったのでしょうか。
まず中国では、EVメーカーに対して相当の政府補助金が注ぎ込まれていることは想像に難くありません。
そのうえ中国国内で自動車を購入しても、EV(電気自動車)でなければ「ナンバープレート」を取得できないという。
ナンバープレートがなければ市中を走行できないので、それで一気にEVが国内の巨大市場に普及したらしい。
そのようにして市場競争力を蓄積していった中国のEV社は、ついに世界へ向け輸出を拡大していったわけです。
とりわけ欧州市場向けの輸出を拡大したようですが、敵もさることながら既に欧州側もまた対中包囲網をつくって中国製EVの締め出しにかかっています。
例えばフランス。
フランスもまたEVに対する補助金(欧州車優遇)を出しているのですが、これはWTOルールに違反しません。
要するにこうです。
完成されたEVが温暖化ガス(CO2)を排出しなくとも、それを製造する過程、例えば原材料の調達から加工生産から、あるいはEVが廃棄処分されるまでの間、どれだけのCO2を排出したのか(カーボンフットプリント)、それが低いEVメーカーに補助金を出しています。
すなわち、中国のようにEV生産に際して大量の石炭を燃やしているような場合は「補助金の対象にならない!」とやっているわけです。
また、中国製EVを欧州まで運ぶ際には大型のコンテナ船で運んでいるわけですが、そのコンテナ船もまた当然のことながら化石燃料を燃やして海の上を走っています。
よって、その距離を運んでくる時に排出されるCO2までもがカーボンフットプリントとして換算されるとのことです。
ご承知のとおり、現在はスエズ運河を通ることができないため喜望峰を経由して欧州まで運んでいますので、その量は相当なものでしょう。
その分まで換算されては、なるほど中国製EVに勝ち目はないということか。
フランスと同様のことをイギリスも行っているようです。
このようにして中国メーカーを排除し、国産のEVメーカーを育てようとしているわけです。
一方、エンジン車の新車販売の禁止を目指していたEU(欧州連合)ですが、CO2の排出が実質ゼロとされる合成燃料の使用を条件にエンジン車の販売継続を認めることになりました。
この背景には、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなどの自動車産業を支えるドイツ政府が、合成燃料の利用容認とエンジン車の販売継続を求め協議が進んだことにあります。
おそらくドイツはEVシフトへの移行は現実的に難しいと判断しているのだと思います。
合成燃料は二酸化炭素と水素を合成して製造され、燃料として使うとCO2を排出するのですが、製造時に大気などから二酸化炭素を回収するため排出量は実質ゼロとなりますので、カーボンフットプリントにもカーボンニュートラルにも適っています。
合成燃料の利用が可能となれば、ハイブリッド技術を生かした日本車、すなわちトヨタにも勝ち目が出てきます。
再び内燃機関の時代へと変化するのか、その点では今後の動向が楽しみです。
そういえば、トヨタ自動車の豊田章男会長が、あるインタビューで「私は、ガソリン臭いクルマが好きです…」とお答えになられていました。
私も同感です。