ことしは、介護報酬、診療報酬、障害福祉報酬の3つが改定される年です。
過日(1月22日)に開催された厚労省の社会保障審議会(介護給付費分科会)において、介護報酬改定に関する事項が明らかになりました。
介護報酬改定の改定率は全体としてプラス1.59%になるようですが、その内訳をみますと、なんと「訪問介護サービス」の基本報酬が引き下げられるのには驚かされました。
訪問介護サービスの基本報酬が引き下げられることになったのは、審議会に言わせると2つの理由があってのことらしい
一つ目は、訪問介護サービスの利益率が、全サービスの平均利益率に比べて高いこと。
二つ目は、介護職員以外の職種の処遇改善を優先させたのだと言う。
まず前者についてですが、全サービスの平均利益率は2.4%であるのに対し、訪問介護サービスのそれは7.8%となっていることから、審議会としては「他のサービスに比べ、訪問介護サービスは充分に儲けているだろぅ…」と言いたいらしい。
「だから、報酬を減らされても文句を言うな…」と。
いや待て、全サービス平均2.4%が低すぎるのであって、けっして訪問介護サービスの利益率が高すぎるわけではない、という発想に彼ら彼女らは至らないのでしょうか。
百歩譲って仮に儲けていたとして、その分、国は法人税や所得税できっちり回収するだろうが。
しかも、訪問介護事業者にしても生産性向上のための新たな投資をしなければならず、そのための余剰資金が必要でしょう。
それに「儲け過ぎている…」と言うけれど、昨年一年だけでも訪問介護事業者の倒産件数は67件に及んでいます。
後者については、例によって「国にはおカネがない…」「おカネは物である(貨幣のプール論)」という2つの誤解から生じる典型的な緊縮財政論です。
「財源は限られているんだから、あっちを増やす分、こっちを減らさねば…」と。
その根底には「財源は税金である…」という誤解もあります。
審議会のメンバーにしても、厚労省の役人にしても、国会議員にしても、まったく解っていないのは、基本報酬を減額された介護事業者は当然のことながら経費を抑制しようと考えざるを得ない…という点です。
例えば、訪問介護事業者が物品を購入する際には、経費節減のために取引先(下請け)を叩かねばならなくなります。
すると、叩かれた側の取引先もまた経費を抑制しなければならないので、その一環として人件費を圧縮(雇用を縮小)せざるを得なくなってしまいます。
こうしてまたデフレスパイラルが深化していくわけです。
政府とその関係者らが誤った貨幣論と財政論を持ちつづけるかぎり、国民経済の貧困化に歯止めがかからないのも当然です。
悪いのは政治家か、それとも政治家を選ぶ国民か。