昨日のブログで取り上げましたとおり、資材高騰、人手不足、コロナ融資(ゼロゼロ融資)の元本返済の3つが、とりわけ建設業の経営を圧迫しています。
建設業のみならず、飲食店などのサービス業や小売業でも同様の状態にあろうかと思われます。
資材や食材の価格が上昇していることを受けて「日本経済はインフレ状態にある…」と言っている人たちがいますが、それは一部の分野におけるコストプッシュ型インフレであって、本来目指しているデマンド型インフレではありません。
デマンド型インフレとは、総需要が拡大するなか、企業が投資を行い供給能力を拡大し、結果として物価と賃金(実質賃金)が相乗的に上昇していくインフレ経済のことです。
高度経済成長期の日本が、まさにそれです。
私が生まれたのは1971年ですが、1973年の第一次オイルショックまでの日本経済は、この状態でした。
年々拡大する需要に対応するため、企業は生産性向上のための投資(設備投資、人材投資、技術開発投資)を行い供給能力を引き上げ、政府もまたインフラ投資(防衛以外)のための財政支出を拡大していったのです。
結果、日本国民の実質賃金は上昇し続けるかたちで我が国は豊かになっていきました。
企業が人を安く買い叩くのではなく、人を高く雇用するかたちで生産性の向上が進むと、実質賃金は必ず上昇していきます。
すなわち、経済成長とは生産性の向上、及び実質賃金の上昇のことなのでございます。
一方、現在の日本経済は、総需要が拡大しないままに輸入価格高騰が一部の物価を押し上げ、また、人手不足が深刻化しているにもかかわらず実質賃金が下がり続けています。
上のグラフのとおり、実質賃金は長期にわたり下がり続けています。
需要が不足する中、政府は緊縮財政を旨としてカネを使わない。
需要拡大を見込めない企業が生産性向上のための投資を行うわけもなく、コストカットをひたすら低賃金労働者(人件費削減)に求めて株主利益を確保しています。
さて、今年2024年は人手不足が更に深刻化します。
ゆえに、もしも企業が生産性向上のための投資を決断し、その上で人を高く雇ってくれれば、まちがいなく日本は健全なかたちでデフレを脱却し経済成長路線に入ります。
逆に、将来不安から企業が生産性向上のための投資を行わず、低賃金の外国人雇用や非正規雇用など、人を安く買い叩く方向に向かってしまうと、実質賃金が上がらないかたちでデフレを脱却するという実に最悪の事態に陥ります。
その場合、結果として人手不足は終わらず、国民の実質賃金はさらに下落していくことになります。
それだけではありません。
国民経済の供給能力、すなわちモノやサービスの生産能力が常に足りないがゆえに、例えば病気で診療を受けたいと思っても、受け入れる医師、看護師、病院が足りない。
あるいは家を建てるにも、職人がいなくて建てられない。
道路や橋をつくるにも、建設会社が足りないからつくれない。
挙句の果てには、安全な水を飲むことさえもできない。
こうなると、いよいよ発展途上国型のインフレ経済となります。
そんなかたちでのデフレ脱却では全く意味がありません。
こうならぬためにも、政府は緊縮財政路線(財政政策)を転換し、まずは総需要を拡大しなければならない。
そして日本企業は人を安く買い叩くのではなく、高く雇用することを前提に生産性向上のための投資を拡大するべきです。
いま、日本の政治も経済も大きな岐路に立っています。