倒産相次ぐ建設業界

倒産相次ぐ建設業界

建設会社の倒産が相次いでいます。

帝国データバンクによれば、過去3年の倒産件数は、2021年が1,066件、2022年が1,204件、2023年が1,671件です。

建設業の倒産件数が1,600件を超えたのは8年ぶりのことで、2022年に比べると38.8%も増えたわけですが、増加率が30%を超えるのは2000年以降はじめてのことで、リーマン・ショック期にも見られなかった高い水準となっています。

今年は更に増える可能性が高い。

ちなみに、倒産と廃業は異なります。

倒産は経営が破綻して法的整理がされた上で存続不可能となった会社を指し、廃業は法的整理を伴わない事業停止状態の会社を指します。

なので、廃業を含めますと、もっと多くの建設会社が潰れていることになります。

建設業界の場合、廃業件数は倒産件数の7倍になるとも言われています。

通例では、建設業の倒産件数は3月、6月、9月、12月などの「3の倍数月」に増えるとされているのですが、2023年の場合は、4月も5月も増えています。

しかも、元請けよりも下請けの倒産が多くなっています。

さて、これらの主たる要因は、①資材価格の高騰、②人手不足、③コロナ融資の元本返済のトリプルパンチです。

むろん、資材価格の高騰と人手不足が複雑に組み合わさって工期が長期化していることも大きな原因です。

川崎市が発注している公共施設の建設についても、工期が遅れることがしばしばで、入札不調になる案件が増えています。

コロナ融資の元本返済とは、コロナ禍での倒産を抑止するために実施された実質無利子・無担保の融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済のことです。

民間金融機関分の返済は昨年(2023年)の7月からはじまり、ことしの4月にピークを迎えます。

昨年(2023年)の1〜9月期のゼロゼロ融資利用後の倒産件数は93件でしたので、返済が負担になっている企業は決して少なくないはずです。

業種細分類別でみますと、木造建築工事業、内装工事業、木造建築工事業を除く建築工事業、土木工事業の倒産が多くなっています。

このままでは、コスト負担に耐えきれぬ小・零細企業はもちろん、収益確保や資金調達が困難な中小企業は、ことしの夏を乗り切れるかどうか。

資材価格高騰とコロナ融資返済は、究極的には政府がカネを創造(通貨発行)すれば改善される話です。

しかしながら、人手不足の解消は一筋縄では行きません。

この30年間、「日本はクニのシャッキンで破綻するぅ〜」と叫んできた人たち、あるいはこの30年間、公共事業を敵視し「公共事業は無駄だぁ〜」「土建屋へのバラマキだぁ〜」などと言ってきた人たちのせいで、我が国の建設業を支える貴重な人材は毀損され続けてきたのです。

その結果として、現在の人手不足があります。

必ずしも「少子化」だけが原因ではありません。

失われた人材を取り戻すことは難しく、これだけはおカネ(通貨発行)では解決できないのでございます。

むろん、そのツケを支払わされるのは全ての日本国民です。