新時代のエネルギー争奪戦

新時代のエネルギー争奪戦

私たちの生活、経済活動、安全保障、これらを物理的に支えているものは「電気」です。

例えば、朝起きて顔を洗うための水も、お湯を沸かすためのガスも、電気がなければ供給されない。

パンを焼くトースターも、通勤の際に必ず利用するであろう電車、エレベーター、エスカレーター、信号機、スマホ、PC、あるいは医療機関で使用される医療機器、製造業で使用される工作機械、自衛隊に配備されている武器システム、これらも悉く電気が安定的に供給されていればこそ利用できるわけです。

すなわち電気は、あらゆる産業、生活のはじまりです。

では、「電気はどこから送られてきますか?」という問に、あなたならどのようにお答えになりますか?

ある女学生が「電気はコンセントから送られてくるんでしょっ」と答えたことは実に有名な話です。

確かにエンドユーザーからしてみれば、コンセントにプラグを差し込めば電気は送られてきますね。

しかしながら、電気を作るのに必要なエネルギーをいかに確保するのかという問題を国家規模で俯瞰すると話は全く異なります。

とりわけ我が国の場合、割合から言えば、その多くを中東に依存していますので「電気はどこから送られてくる?」という質問の答えとしては、「中東の砂漠の地下から送られてくる!」となります。

砂漠の地下にあるものとは、むろん石油(原油)です。

二度のオイルショックを経たこともあり我が国の石油依存度はそれなりに低下させていますが、2021年度の原油輸入量に占める中東地域の割合は92.5%です。

ちなみに、石油はタンカーで運ばれてきますが、中東から日本まで2〜3日で届くわけではなく、約2週間ぐらいはかかります。

それを精製し発電所で燃やし、そのときの蒸気の力でタービンを回し発電しています。

さて、2022年のロシア・ウクライナ戦争、2023年のイスラエル・ハマス紛争を経て、世界はまさにエネルギー戦略の大転換期に突入したかのようです。

中東紛争が激化すれば、ホルムズ海峡やマンデブ海峡などの地政学的チョークポイントが封鎖されます。

覇権国として退潮傾向にある米国には、もはや中東紛争を抑え込むほどの力は失せています。

原油輸入の9割以上を中東に依存している我が国はどうするのでしょうか。

再生可能エネルギーの限界、あるいは米国のシェール革命が世界のパワーバランスにどのような影響を与えるのか、また、プーチンが引き起こしたエネルギー危機への欧州各国の対応、電気自動車を動かすための資源をいかに確保するかに執念を燃やす中国等々、エネルギー資源を巡る各国の攻防は新たなステージに突入していると言っていい。