資本主義経済とは、企業がおカネを借りて投資をすることで長期的にGDP(国内総生産)を成長させていく経済システムのことです。
以下、「経済成長」とはGDP成長のことを指し、株や不動産など資産価値の上昇のことを指しません。
さて、資本主義経済においては、企業がおカネを借りなくなったり、銀行がおカネを貸さなくなったりすると、経済成長の力は一気に鈍ることになります。
ただ、企業に代わって政府が国債発行しておカネを使ってくれるかぎり、経済はなんとか成長可能です。
政府が国内向けに行う支出は、立派なGDPですので。
1991年にバブル経済が崩壊し、多くの企業がバランスシート改善のために投資(借入れ)を抑制しはじめたものの、それでも1997年までの日本経済がそれなりに成長したのは、政府がそれなりの財政支出を行っていたからです。
しかしながら、1997年以降の日本政府は、「政府財政は破綻するぅ~プロパガンダ」によって財政収支の縮小均衡主義、いわゆる緊縮財政に陥り、デフレ経済に突入してしまいました。
以後、デフレ経済は今なお克服されることなく、四半世紀以上も続いています。
我が国のGDP(2023年)がドル換算でドイツに抜かれ、世界3位から4位に転落するのはご承知のとおりです。
一方、1990年代後半ごろから、やたらと銀行の不良債権問題が取り沙汰されるようになりました。
不良債権なんて、そのまま放っておけばよかったのに。
不良債権を短期間で強引に処理すると市場に甚大なショックを与えますので、できうるかぎり市場にショックを与えないよう時間をかけて緩やかに処理することが望まれます。
どうしても処理したいのであれば、各銀行がもつ不良債権を債権処理機構等にまとめ、それを日銀(中央銀行)がすべて買い上げればよかったはずです。
それで問題解決です。
リーマン・ショックの際の米国も同様のことをしています。
しかし、なぜか日本はそれをしませんでした。
例えば、巨額の不良債権を抱えた長銀(現在のSBI新生銀行)は一時的に国有化され、7兆円ちかい国費が投じられたうえで、たしかたったの2,000億円程度でリップルウッドという外資系投資ファンドに売却されてしまいました。
ちなみに、日債銀(現在のあおぞら銀行)も同じ憂き目にあっています。
さらに、2000年代初頭になると再び銀行の不良債権問題が政治問題化しました。
なぜか森政権末期から小泉政権にかけて、突如としてマスコミが「不良債権を早期に処理すべきだ」と騒ぎ出したのです。
その背景には、当時の米国大統領であったブッシュ氏から「日本の不良債権を早期に処理せよ…」と、小泉首相に親書まで出して圧力をかけてきたことにありました。
その親書には「銀行の不良債権や企業の不稼働資産が早期に市場に売却されていないことに強い懸念を感じる」とあり、要するに「はやく処理して外資に売却しろよ」と脅してきたわけです。
彼らは、長銀や日債銀でよほどに美味しい思いをしたのでしょう。
結局、小泉政権下で金融担当大臣をしていた柳沢さんがノロノロと不良債権処理に手こずっていたので外され、竹中平蔵氏が経済財政政策担当大臣と金融担当大臣を兼務し、米国様の言う通りに事を進めました。
結果、2001年度末に約43兆円あった我が国の不良債権は、2004年度末には半分以下に減少していますので、早期の不良債権処理には成功したと言えるでしょう。
むろん、どんなに不良債権を処理しても実体経済は一向に改善されることなく、むしろデフレ化に拍車がかかりました。
そもそもバブル崩壊は金融資産の暴落の話であって、実体経済には関係がありませんでした。
繰り返しますが、政府がデフレ・ギャップを埋めるための財政支出をしているかぎり実体経済(GDP経済)は成長するのです。
にもかかわらず、政府は財務省のご意向どおりに緊縮財政をつづけ、小泉内閣(竹中金融相)の際には銀行の資産査定を厳格化するなど、銀行貸出しを抑制させることまでしています。
これではデフレを脱却することなど不可能です。
結果として、デフレと不良債権処理が、米国様のM&Aビジネス(日本企業を安く買って高く売るビジネス)を容易にしたのです。