復興増税の必要はない

復興増税の必要はない

気象庁によれば、能登半島地震の被災地は、上空の強い寒気の影響で局地的に雪が強まっており、積雪が増えているとのことです。

災害は時と場所を選ばないのは常なれど、寒さや積雪による不便とも戦わねばならない被災者の皆様をお見舞いしますとともに、被災地支援に取り組まれている方々の活動に支障がでないことを祈るばかりです。

さて、時は遡って2018年6月のことですが、公益社団法人土木学会は「今後30年以内の発生確率が70~80%とされる南海トラフ地震が日本経済に与える被害総額は、20年間で最悪1410兆円になる」という推計結果を公表しています。

その中で土木学会は、発生が予測されている南海トラフ地震、首都直下地震、三大都市圏の巨大水害を「国難」と呼び、この「国難」に対処するために防災のための大規模な公共インフラ投資を提言したわけです。

ところが、です。

その発表について、当時、財務省財政制度等審議会会長だった吉川洋(東京大学名誉教授)が、ある月刊誌において、政府債務対GDP比率と財政破綻の関係を理由に「国難としての自然災害を機に、亡国の財政破綻に陥ってしまう…」と述べたのです。

すなわち「国難だからカネを使えと言うけれど、政府債務対GDP比率が高まって財政破綻したら意味ないじゃん」と言ったのです。

残念ながら、こうした考え方は未だに世の主流です。

当該ブログでは繰り返しになりますが、政府債務対GDP比率と財政破綻は関係がありません。

かつて英国は、政府債務対GDP比率が300%近くまで上昇しましたが、財政破綻などしていません。

また、いつも財政破綻論者は「国債発行は金利上昇につながる…」と言うのですが、国債金利は中央銀行が常にコントロール可能です。

現にECC(イールド・カーブ・コントロール)で実証済みです。

どうしても金利の上昇を回避したいというのであれば、中央銀行が国債を買い取ればいいだけなのです。

それから、この種の人たちが決定的に誤解しているのは「政府債務の返済手段は国税収入だけ…」という点です。

これについても、現に継続的な借換(新規国債の発行によって同額の国債償還を行うこと)によって国債は運用されています。

てゆうか、政府債務というものは原則として「完済をする必要がない債務」なのです。

ゆえに、ほとんどの先進国において、国家予算に計上する国債費は利払い費のみで償還費を含めていません。

先進国で「償還費」を一般会計に計上しているのは日本だけです。

「日本は財政危機であり、公共事業費を増やすことはできない…」という思い込みは依然として根強いものがありますが、重要なのは、家計や企業が行う借金のアナロジーで考えてはならないことです。

たしかに「国債は返済しなくてもいい」というのは、家計や企業の一般常識に反するものであり、感覚的には受け入れ難いことかもしれません。

しかしながら、政府債務と民間債務は、制度的にまったく異なります。

政府債務を民間債務と同じように考える通俗観念こそが、あり得ない財政破綻への恐怖を掻き立て、国民の生命と財産を守るために必要な公共事業の実施を阻んでいます。

今回の能登半島地震についても「復旧復興のための財源がぁ〜」などと言って、まちがっても復興増税など行ってはならない。

むろん、その財源は国債発行でいい。