ふるさと納税は、一刻もはやく廃止すべき制度です。
当該制度は、一定の要件を充たした場合、地元の自治体に納めるべき住民税の一部を別の自治体に納め、その見返りとして納付先の自治体から「返礼品」を受け取ることができるという制度です。
ご承知のとおり、ふるさと納税がはじまって以来、自治体同士での「財源の奪い合い」が生じています。
ここに当該制度の決定的な問題点があります。
それは、たとえ「ふるさと納税」が増えたとしても、日本全体で財源が増えているわけではないということです。
自治体同士が不必要な労力をかけて「財源」というパイの奪い合いをしているだけなのです。
すなわち、当該制度により、税収が豊かな都市部から税収に恵まれない地方へと財源を振り分けたいのでしょうが、べつに振り分ける必要などはなく、地方交付税交付金という既存制度を普通に充実させればいいだけの話です。
ただ、それだけ。
因みに、財源(パイ)の奪い合いに敗れた自治体は減収分の4分の3が地方交付税交付金でカバーされていますが、川崎市などのように地方交付税交付金をもらっていない自治体は対象外となっています。
川崎市が地方交付税不交付団体なのも制度的におかしいことなのですが、この問題は別の機会で…
我が国の権力中枢には、どうしても政府支出を拡大したくない連中がいます。
彼ら彼女らは、とにかく「政府支出を拡大することなく、自治体同士で財源調整してくれればありがたい…」と考えたのでしょう。
とはいえ、ふるさと納税制度は、自治体には事実上、寄付額の半分程度しかおカネが入っていないのが現実です。
大半のふるさと納税には返礼品がありますが、なんとその経費は寄付額の3割程度を占めており、それとは別に送料などの諸経費が2割程度もかかっています。
返礼品の調達とともに、広報、決済、事務などの諸費用の総計は全国で3,034億円(2020年度時点)となっています。
だったらその分、地方交付税交付金の予算を増やせばいい。
各種の調査によると、ふるさと納税をする理由の圧倒的第1位は、やはり「返礼品」らしい。
返礼品は制度として「地場産品」に限定されています。
とりわけ、肉類、魚介類、おコメといった、保存の利く一次産品に人気が集中してしまう傾向が強いようです。
また、利用者は、どうしても人気の高い返礼品を選択する傾向があるらしく、結果として一部の自治体に寄付が集中することとなり、いわば「勝ち組」と呼ばれる自治体の顔ぶれが固定化していくわけです。
あたりまえですが、人気のある返礼品を用意できない自治体は当該制度の恩恵に浴することは困難です。
川崎市などは完全な「負け組」ですが、「勝ち組」の地方の自治体と、「負け組」の都市部の自治体との間の格差もまた凄まじい。
高所得層が多い都市部の自治体ほど住民税の流出に見舞われているのはご承知のとおりです。
それは、高所得者ほどふるさと納税の所得控除上限が高くなっているためですが、ふるさと納税は住民の自由意志で行われますので、自治体には止める術はありません。
地方交付税不交付団体である川崎市では、年々拡大する税収減によって将来的な行政サービスの劣化は否めません。
地方行政全般としても、制度の恩恵よりも負担のほうが大きいのは確かです。