今日は11月23日(新暦11月、2回目の卯の日)、宮中では新嘗祭が行われます。
天皇陛下は新穀を天神地祇に勧め、これを食されます。
むろん、宮中祭祀のみならず、伊勢神宮などでも同祭事が行われます。
言わでもがな、我が国の天照大神は稲作の神でもあられます。
ゆえに、私たち日本国民は、安全保障の観点からも、そして歴史的文化的な観点からも、おコメを生産する力を維持していかねばならないわけですが、今から6年前の2017年、おコメに関わる重要な法律案が国会でわずか12時間の審議をもって、あっさりと廃止されてしまいました。
廃止された法律とは、『主要農作物種子法』(以下、種子法)です。
もともと当該法律は、日本の主食である「コメ・麦・大豆」という3大主要農作物について、どんな時でも国民に安定供給されるよう、それらの種子の生産と普及を国の責任としたものでした。
種子の生産と開発は、手間や時間などコストのかかる作業です。
コメの種子などは、農家に届くまでに最低4年はかかります。
その上、特定地域の希少米の場合、市場に出回る量も少なく、手間暇をかけてもほとんど元が取れません。
といって、種子農家に「割に合わないから、もう種子は作らない…」と言われても困るので、種子法によって、種子の開発予算を都道府県(財源は国から)が負担するスキームになっていました。
こうして、コメ、小麦、大豆の種子は、国の管理下に置かれ、自治体の農業試験場で公務員が原種(採種園に撒く種)と原原種(原種の種)を生産し、それが種子栽培農家に配られてきました。
同時に、種子農家は自治体の厳格なチェックを受けつつ、雑草や異株などの抜き取り作業を徹底して種子を完璧なものとしてきたわけです。
このように手間と時間とおカネをかけて作られた種子は、すべてJA(農業協同組合)が安定価格で買い取ってくれたし、稲作農家にも安定した価格で売られたのです。
要するに我が国においては、種子が公共資産として扱われてきたのは種子法のお陰だったのです。
種子法が廃止された理由を簡単に言うと、「外国から安い種子を買えばいい…」「そうすれば種子を維持するためのカネを削減でき、財政再建になる…」ということです。
実に馬鹿げています。
種子法が廃止された今、公的制度や予算なしに農家が自力で種子を開発するのは困難です。
よって、農家は民間種子会社の割高な種子を買わされています。
現在、その価格は公共種子の10倍以上になっているらしい。
そのことが、農家経営を圧迫していることは言うまでもありません。
やがて私たち日本国民は、外資によって製造された遺伝子組換種子のおコメを食しなければならないのかもしれません。
考えたくもありませんが、宮中の新嘗祭でお祀りされるおコメが遺伝子組換えのおコメになってしまう日が来てしまうのでしょうか。