岸田内閣は先ごろ閣議決定した「経済対策」の中に、極めて小規模限定的な所得税減税を盛り込んでいますが、結局は防衛力強化、少子化対策などのために増税(法人税、所得税、たばこ税の増税)や歳出削減などの国民負担を用意しているために経済対策の効果はほとんど期待できません。
とにもかくにも、コストプッシュ・インフレによる実質賃金の下落を即効的に食い止めるには、消費税の税率を引き下げることが最も効果的だと思うのですが、ご承知のとおり岸田内閣というよりも例によって財務省様がそれを許さない。
財務省としては、どんなことがあっても絶対に「消費税の税率を引き下げた…」という前例をつくりたくないのでしょう。
消費税の税率引き下げによる経済効果が覿面だった場合、そのことが消費税廃止への蟻の一穴となってしまうことを恐れているのだと推察します。
過去の実質賃金の推移をみても、消費税の税率を引き上げたときにこそ実質賃金はものの見事に下落していますので、逆に税率を引き下げれば実質賃金が上昇することは目に見えています。
財務省に限らず、多くの政治家たちが絶望的なのは、いつも言うように「税収」を「財源」として理解していることです。
まるで家計簿のように「これから子供の教育費におカネがかかるから、どこかからおカネを調達してこなければならない…」という話と混同しています。
何度でも言いますが、資本主義の下における政府は、防衛費や少子化対策の財源を確保するために増税を行う必要など全くありません。
政府が債務を増やすことで、すなわち国債を発行することで貨幣を創造し、それを防衛支出や少子化対策に充てればいいだけの話です。
むろん、だからといって国民は何も負担しなくてもいいわけではありません。
実は負担するものはあります。
ただし、ここでいう負担とは、「増税」とか、「社会保険料の引き上げ」とか、「将来世代への借金のつけまわし」とかの類ではありません。
これらとは全く異なる負担があります。
資本主義の下における政府は、資金的な制約からは解放されるものの、残念ながら実物資源の賦存量には制約されます。
この実物資源の制約こそが国民の負担となります。
例えば防衛力を強化するためには、武器や基地を増強したり、自衛隊員を増やしたりする必要があります。
何度でも言いますが、そのためのおカネは在ります。
しかしながら、防衛力強化のためには、ヒト、モノ、技術などの供給リソースをそこに投入しなければなりません。
そのため、防衛関係以外の分野に投入できたはずの労働力や資材などの実物資源が不足することになります。
実物資源には制約が在りますので当然です。
実物資源の不足は、むろんインフレ圧力となります。
供給能力 < 需要
このインフレ圧力こそが、真の国民負担です。
だからこそ、供給リソースを脆弱化させているデフレを一刻も早く脱却し、同時に供給リソースを強化するための各種投資を行い、なおかつコストプッシュ・インフレを緩和するための消費税の税率引き下げが求められているのでございます。