全国の病院や薬局で、薬が不足しています。
とりわけ、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の供給不足が深刻化しています。
よく知られているように、ジェネリック医薬品とは、先発医薬品の特許が切れた後に作られる薬のことで、先発医薬品と同じ有効成分を持ちつつ、開発費が少ないために価格が低く抑えられているのが特徴です。
ジェネリック医薬品の使用割合は、2011年まで40%未満でしたが、2021年には80%近くまで増えています。
約10年間で、シェアが2倍に拡大したことになります。
シェアが拡大した背景には、医療費を抑制したい国と、少しでも負担を軽くしたい患者の利害が一致したことにあるのでしょう。
しかしながら、ご承知のとおり国が定める価格(薬価)は下がり続けています。
医薬品メーカーの経営環境は厳しさを増しているようで、メーカーの数自体は逆に少しずつ減っているという。
需要が伸びてもメーカーが増えず、さらに中小企業も多いことから、結果として、1つの会社が多くの品目の医薬品を少量ずつ製造するという、いわば「少量多品目生産」という構造が広がったようです。
さて、日本製薬団体連合会の調査によれば、今年9月の時点で、ジェネリックの1,700余の品目で出荷が制限され、1,200余の品目で供給が停止されているらしい。
出荷が制限、もしくは停止されている背景には、ジェネリックメーカーによる相次ぐ不正問題がありました。
3年ほど前、福井県の医薬品メーカーが、水虫などの薬に睡眠導入剤の成分が混入するという問題が発生しました。
何らかの手違いがあって混入された、という話ではなく、国が承認していない工程で製造を行うなど、いかにも悪質な不正が原因だったようです。
社員教育が不十分なまま、無理に生産を拡大した事なども問題視されていたようです。
その後、大手の医薬品メーカーでも製造工程や品質管理の不正が次々と明らかになり、業務停止や改善命令を受けた医薬品メーカーは、なんと15社にのぼりました。
先月も、ある大手の医薬品メーカーが胃薬の品質試験に不正が見つかったとかで自主回収しています。
このように出荷停止が相次いだことで、同じ成分の医薬品を製造する真っ当なメーカーに注文が殺到。
結果、業界全体として製造が追いつかなくなり、出荷を制限せざるをえないケースが起きています。
供給不足の常態化は既に2年以上も続いていますが、未だ収束の目途は立っていません。
医薬品メーカーの不正問題が深刻な薬不足を招いたわけですが、現在、約190のメーカーが約1万1,000品目もの薬を供給しています。
むろん、こうした企業の大多数は、適正に製造を行う真っ当なメーカーなのでしょう。
問題は、一部の医薬品メーカーのコンプライアンス意識の低さにあるようです。