10月13日、イスラエルはハマスへの地上侵攻に先立ち、ガザ北部に住む200万以上の人々に対し、24時間以内に南部に避難するように命じました。
これを受け国連はイスラエルに対し「この命令を実施すれば壊滅的な人道的悲劇になる…」として、その撤回を求めていましたが、それでも、ガザの人口の約半分にあたる100万人以上が避難しているらしい。(10月15日時点)
とはいえ、ガザ住民の避難場所は限定的です。
そこで米国は、国連やその他の国際支援機関と協力して市民が緊急支援を受けられる安全地帯をガザ内部に設け、食料や水などの支援物資を充分に供給できるようにしているようです。
例えば、UNICEF(国連児童基金)やUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)は、医薬品や燃料など必要不可欠な物資やサービスの提供を支援しています。
この他にも、パレスチナ赤新月社、あるいは国境なき医師団なども、紛争のさなかにある人々に人道支援を提供しているとのことです。
もしもイスラエルがガザへの地上侵攻を開始すれば、人道的、道徳的、戦略的な大惨事は免れない。
そうなれば、当地に暮らすパレスチナ人に計り知れない人的ダメージを強いるばかりではなく、中東の長期的な安全保障が大きく損なわれることになります。
なによりも、地上侵攻が現実的なものとなれば、新たなパレスチナ人の強制移住の引き金となる恐れがあります。
米国だって、覇権国としての核心的利益が脅かされることは必定です。
あるいはイスラエルのガザ侵攻が、ヒズボラを新たな行動に駆り立てる転機になるかもしれません。
様々に思いを巡らせるだけでも、恐ろしいことばかりです。
加えて、もしも戦争が長引くような事態になれば、さらに予期せぬ悲惨な事態に直面することになるでしょう。
さて、ご承知のとおり我が国では、エネルギーを中東地域に過度に依存することは非常にリスクが大きいと言われてきました。
今回のように、当該地域は軍事的緊張にさらされる危険性が潜在的に大きいからです。
ゆえに、日本はエネルギー安全保障を確立するために、石油のほかにも各種のエネルギー資源の調達先の分散化を進め、新たな供給源を模索してきたわけです。
といって、太陽光だの風力だのといった再生可能エネルギーでは飯は食えない。
ゆえに、水素エネルギー開発などを確実に進めることが必要ですが、それら新エネルギーの実用化には時間を要しますので、当然のことながら稼働させることのできる原発を稼働させるなどしてベストミックス状態を維持するほかないでしょう。
むろん、外交面においても、引き続きエネルギー安全保障を確保する努力を怠ってはならず、中東諸国との良好な関係はこれからも大切となります。
しかしながら、現在の我が国は、中東においても中国の外交力に押され「かつてのような存在感がない…」と言われています。
それ即ち、エネルギー資源の争奪戦となった際、我が国が苦戦を強いられることを意味しています。
ここでいう外交力の背景には、必ず軍事力があることを私たち日本国民は深く理解しなければなりません。
また、中東の産油国も将来を見据えて脱石油の経済改革や技術開発に力を入れていますので、日本としてもこうした取り組みに投資するなど、その協力や支援を惜しむべきではない。
すなわち、経済力を通じても信頼関係を築くことが重要です。
そのことは、必ず我が国のエネルギー安全保障に寄与するものと考えます。