露朝関係は強化されるか

露朝関係は強化されるか

ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金総書記の蜜月ぶりに注目が集まっているなか、ロシアとの境界に近い北朝鮮側の鉄道施設に多数の貨物車両が確認され、北朝鮮からロシアへの武器の供給が行われている可能性があるとの分析を、米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)が発表しました。

CSISが公表した衛星画像分析によれば、確認された貨物車両は過去5年間で前例のない規模らしく、その貨物車両数は73車両だったという。

先月に行われたプーチン大統領と金総書記との首脳会談では、軍事分野や戦略的戦術的協力などについての協議が為されたようですので、そのときの合意事項なのかもしれません。

北朝鮮は、ここ数年で急速に核弾頭の備蓄を増やしているとも言われています。

ご承知のとおり、金総書記は米国との非核化の話し合いには一切応じず、核の先制使用ドクトリンを誇示していることから、平壌の判断ミスが戦争につながるリスクは高まるばかりです。

ここのところ、盛んに米韓合同軍事演習を行っているのはそのためなのでしょう。

それに、国力が退潮気味の米国としては、韓国との同盟を深化させるだけではなく、今後は日本にもそれなりの役割を果たさせたいと考えているようです。

先般のキャンプデービットでの首脳会談においても日本と韓国との関係改善を求めていましたが、要するに米国は米韓日の連携強化のために「おまえら、もっと仲良くしろよ…」と言いたいわけです。

さて、ロシアと北朝鮮の両国に「政治的利益」と「物質的利益」の共有基盤を提供したのは、なんと言ってもロシア・ウクライナ戦争でしょう。

北朝鮮は、ロシアが独立させたウクライナ東部の2州(ドネツク州とルハンスク州)を独立国家として承認することでロシアに政治的支援を提供し、ロシアはロシアで、安保理決議に反する長距離ミサイルや人工衛星の発射に対する国連安保理のさらなる非難から北朝鮮を守って政治的支援を北朝鮮に与えました。

今後は、天然資源に恵まれたロシアと、武器輸出で儲けたい両国の物質的利益の共有基盤も強化されそうです。

実は7月にも、ロシアの国防相が北朝鮮を訪問しています。

その際にも、金総書記は国内の軍需工場を視察案内していましたので、それもまた「ロシアに兵器を供給する拠点になりたい」という願望の現れだったのかもしれません。

とはいえ、北朝鮮が将来的に兵器生産の拠点となれる可能性はあるのでしょうか。

北朝鮮は、生産効率や部品などの調達能力が低いため、ロシアに兵器を供給できるようになるポテンシャルはそれ程高くないとも言われています。

北朝鮮がロシアに提供できるとすれば旧式の大砲やロケットシステムであり、それらは殺傷力はあるものの、近代的な誘導システムを備えていない兵器システムである、と。

一方、北朝鮮がロシアに求める支援は、ミサイルや人工衛星の先端技術や配備への支援、食糧支援等々、多岐にわたるとされています。

報道では、9月14日のプーチン大統領と金総書記との首脳会談で、北朝鮮が弾薬などを提供する見返りに、ロシアからの軍事分野の技術支援などを得る合意があったとも。

その上で、ロシアと北朝鮮の軍事関係が強化されることになれば、これまで北朝鮮が獲得を望みつつも、中国とロシアが国際的な制裁を守ってきたために手に入れることができなかったハイレベルな軍事技術を簡単に調達できるようになるかもしれません。