川崎市の黒字は、市民の赤字

川崎市の黒字は、市民の赤字

川崎市は、全国の政令指定都市のなかで最も財政力のある自治体です。

また、よく言われているように政令指定都市で唯一、地方交付税交付金の「不交付団体」でもあります。(不交付団体だからといって、誇れることではないのですが…)

しかも、バランスシート的にも着実に純資産を増やし続けています。

それを、先日の決算審査特別委員会で財政局長は「(着実に純資産を増やし続けていることで)将来世代の負担が軽減されている…」と発言したのには誠に驚かされました。

財政局長は、行政部門が黒字(純資産の増)になるということは、民間部門(家計や企業)が赤字(純負債の増)になるということを知らないのです。

すなわち、議会という公的な場において無知をさらけ出したわけです。

よく考えてみれば誰にでも解ることですが、すべての経済主体が純資産(黒字)だけを増やすこともできないし、逆に純負債(赤字)だけを増やすこともできません。

いつも言うように、「誰かの黒字は、必ず誰かの赤字」なのです。

それは例えば、大相撲がはじまると新聞に掲載されている「勝ち負け表」と同じです。

相撲もまた、ある力士の白星は、必ず他の力士の黒星になります。

力士全員が白星になることもできないし、力士全員が黒星になることもできません。

したがって、マクロ経済は国内政府部門、国内民間部門、海外部門から成り立っていますので、次のような恒等式が成立します。

国内政府部門の収支 + 国内民間部門の収支 + 海外部門の収支(資本収支) = 0

ある部門における収支の赤字は、他の部門における黒字によって相殺されるのですから、各部門の収支を合計すると必ずゼロになります。

つまり、あらゆる支出が誰かの所得として受け取られるわけですから、経済全体でみますと、支出の総計は必ず所得の総計と同じになります。

さて、一昨日(10月6日)、川崎市議会(文教委員会)では、図書館を民営化するための議案が審議されたのですが、残念ながら賛成多数で可決してしまいました。

これによりまた、これまで図書館で働いていた正規職員(川崎市の公務員)の給料より、150万円程度も安い非正規社員が増えることになります。

この部分だけをみても、川崎市という政府部門の収支は150万円の黒字(資産の増、負債の減)となり、民間部門の収支は150万円の赤字(負債の増、資産の減)になるわけです。

このようにして、政府部門が黒字化すればするほど、民間部門から資金を吸い上げることになるのです。

生産性向上のための投資を怠り、財政黒字を拡大することこそが、まさに将来世代へのツケであることを知るべきです。

なんどでも言います。

政府部門である川崎市の純資産が増えたことをもって「将来世代の負担が軽減した…」という川崎市の財政局長は経済財政に関して無知をさらけ出しています。