整合性とれぬ川崎市の人権施策

整合性とれぬ川崎市の人権施策

ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による児童・青少年に対する性虐待問題がBBCで取り上げられて以来、国内外において大きな波紋を呼んでいます。

中立な調査委員会が調査を行ったところ、ジャニー喜多川氏による児童・青少年への性的虐待は半世紀にわたり繰り返され、その被害者も数百人、数千人規模という空前絶後の規模であることが判明しています。

しかも重要なのは、そうした性虐待の事実を、ジャニーズ事務所は組織として認識し、その上でその事実を意図的に隠蔽し続けていたとのことです。

当該事件は国連が動くほどに世界からも大きな注目を集めています。

私はポリティカル・コレクトネスやキャンセル・カルチャーなどの欧米基準を全て支持する者ではありませんが、今回明らかにされたジャニー喜多川氏による深刻な性犯罪ともいえる児童・青少年への性的虐待、及びジャニーズ事務所による組織的な隠蔽は、欧米基準でなくとも人権に対する重大な犯罪として断罪されなければならない大きな問題であると認識しています。

こうした事態を受け、一部の企業やNHKなどでは、当該問題に一定のけじめがつけられるまでの間、ジャニーズ事務所所属のタレントを一切起用しないという制裁措置をとっています。

公共放送であるNHKや民間企業が、こうした厳しい措置を採っているのですから、当然のことながら公的機関である川崎市(地方公共団体)もまた、少なくとも同様の措置を講じるべきだと思います。

そこで私は、昨日の川崎市議会(決算審査特別委員会)で、次の①②③を質問しました。

質問① ジャニーズ事務所は、去る10月2日の記者会見において、社名変更のうえ、喜多川氏との決別を表明したものの、それらが果たしてどこまで具現化されるかは不透明である。よって、2004年の性加害認定の最高裁判決以降、事実関係を少しでも知る立場にあった関係者が株の譲渡も含めて一切経営から退き、補償が完全に行われるなどの一定の成果がみられるまでの間、全国の地方自治体に先駆け、人権を重んじる川崎市としてジャニーズ事務所の所属タレントの起用を見合わせる旨などを宣言すべきでは? 

質問② 本市主催のイベントにおいて、これまでにジャニーズ事務所所属のタレントを起用したケースはあるのか?

質問③ 今後、ジャニーズ事務所の所属タレントを新たに起用もしくは契約する企業との関係のあり方はどうするのか?

これに対する川崎市の答弁は以下のとおりです。

「過去5年までさかのぼり可能な範囲で調査したところ、本市主催イベントにおいて、ジャニーズ事務所所属のタレントを起用したケースはございませんでした。今後につきましては、当該問題に一定の整理がつけられるまでの間は、所属タレントの起用は想定しておりません」

さて、もしも皆さんが市議会議員であったなら、この答弁をどのように解釈されますか。

私は、昨日の議場で次のように福田市長に意見しました。

まず、答弁は、人権都市を謳う川崎市としては、極めて消極的かつ日和見的な答弁であったと言わざるを得ず、当該問題に対する本市の認識の甘さを浮き彫りにしたものと考えます。

ことし7月に刑法が改正され、同性間であっても不同意性交罪が成立するようになり、仮に相手が成人であっても5年から20年の懲役刑に該当します。

ましてや今回の事件では、相手は抵抗することが困難な子供です。

しかも、それを組織ぐるみで隠蔽してきたわけです。

これはある意味、ヘイトスピーチとは次元の異なるもので、人権に対する極めて重大な犯罪です。

にもかかわらず、答弁では「今後、起用する想定はしていない」という消極的なものでした。

想定していないということは、場合によっては起用することも在り得るということです。

NHKをはじめ民間企業でも、きっぱりと「起用しない」と断言しているなか、人権都市を謳う公的機関の川崎市が「想定していない」という、極めて後ろ向きな姿勢であることは誠に残念です。

また、答弁には「一定の整理がつくまで」とありますが、所管課であるシティプロモーション室の室長に対し、何をもって「一定の整理」とするのかを確認したところ、それさえも他都市の動向を見極めながら決めるとの答えでした。

あまりにも無責任ではないでしょうか。

本市は、ヘイトスピーチに関しては、他都市の動向云々以前に、全国の地方自治体に先がけて条例化しています。

にもかかわらず、少年に対する性犯罪と、その組織的隠蔽という、明らかな犯罪行為を伴う人権侵害に対しては、世間や他都市の動向を伺いながら注視するわけですから、これでは人権施策としての整合性がまったく見られず、人権都市とは名ばかりであることを指摘せざるを得ません。

重ね重ね残念です。