ヨーロッパは鉄道先進国であると言われており、各国を跨ぐように高速鉄道が走っています。
とりわけ現在では、二酸化炭素の排出量が少なく、クリーンな移動手段、運搬手段として注目されています。
ヨーロッパの面積は約1010万㎡で、50の国と地域があり、人口は約7.4億人います。
北部にはフィヨルドや氷河といった北極圏が広がり、中央にはアルプス山脈やピレネー山脈など高山地帯が連なり、南部には地中海やエーゲ海などの温暖な海岸線があります。
とにかく陸続きで広い。
そんなヨーロッパでは、米国と同様に鉄道網の整備が進み、欠かせない移動手段となったわけです。
ただ、20世紀半ばには、鉄道は斜陽産業と呼ばれ、需要が減少している産業とされていました。
旅客輸送における自動車のシェアが1970年時点で75%弱、1990年には90%超と急速に高まった一方で、鉄道はシェアを6.4%まで下げ、その存在価値を低下させていきました。
しかしながら、1990年代半ばから鉄道のシェアが少しずつ上昇し、2007年には7%にまで回復しています。
ヨーロッパにおいては、まだまだ鉄道は欠かせない移動手段であり、ビジネスや生活においても重要な交通インフラなのでございます。
さて、そんなヨーロッパの、やや真ん中あたりに位置しているチェコで、またしても中国製の高速鉄道が大きな問題となっています。
チェコには「レオ・エキスプレス」という民間鉄道会社(2010年創立)があります。
レオ・エキスプレスは、オープンアクセスにより鉄道事業に参入しました。
日本とヨーロッパでは鉄道の事業方式がことなるので少し説明が必要ですが、オープンアクセスとは、要件を満たした旅客・貨物鉄道事業者であれば、誰でも運行ダイヤを購入して線路を走行できる施策です。
市場原理と正常な運賃競争を働かせることで新規参入を促したい、という目的で導入された事業方式らしい。
そこに、中国大手鉄道企業である「中国中車」も新規参入しています。
中国中車は、中国国営の鉄道車両メーカーであり、中国北車集団と中国南車集団が2015年に合弁して設立されました。
その世界シェアは、「ビック3」と言われた、シーメンス、アルストム、ボンバルディア3社の合計を遥かに上回る巨大企業です。
中国中車の製品は、109の国や地域に輸出されています。
その取引相手の一つがチェコのレオ・エキスプレスです。
ところが、レオ・エキスプレスは購入契約を結んでいた中国中車製の新型電車「シリウス」3編成の契約を解消したとのことです。
中国中車の新型車両「シリウス」は、ヨーロッパでの運行許可を取得するため、チェコのヴェリム試験場で2019年9月からテストが続けられているのですが、未だに審査基準に合格できず運行認可を取得できていないとのことです。
中国中車製品は、車両や部品の精度、あるいは技術力や信頼性の面において、どうやら現状ではまだ日欧メーカーの域には達していないらしい。
現在、ヨーロッパで中国メーカーに圧倒的な差をつけているのは、むろん日本メーカー(日立製作所)です。
日本には未だ技術力の蓄積があります。
その蓄積の差が、他国との優位性を維持しているのだと思われます。
ただ、こうした蓄積が、いつまで中国をはじめとした外国メーカーに対して優位性を維持できるかはわかりません。
技術力を維持・向上させるためには安定的な「需要」が必要です。
ご承知のとおり、緊縮財政主義に陥りインフラ投資を怠っている国内では、大規模かつ長期的な需要が見込めません。
外需に依存する状態が続くようでは先が知れています。
日本メーカーの技術力を維持・向上させていくためにも、政府は国内需要を拡大すべきです。