日本経済新聞がまた、「強まる歳出先行型財政 財源あいまいな3兄弟」という見出しをつけて、まったく筋違いな記事を掲載しています。
「岸田文雄政権の目玉政策である『防衛・少子化・環境』の3分野の歳出増により財政運営が変容しつつある。複数年にまたがる予算を講じ中長期的な投資を可能にした一方、防衛・少子化だけで年8兆円近くにのぼる歳出増の財源は明確に定まっていない。金利上昇圧力もかかる中、『歳出先行』型の財政運営は市場の疑心を強める危うさがある。(後略)」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA01A9F0R00C23A8000000/
要するに日本経済新聞は「財源(歳入)が不明確なまま、歳出ばかりが気前よく先行している」と言い、しかも「ちゃんと増税を確約しないと株価が下がっちゃうだろ…」とまで言っています。
経済新聞を名乗りながら「財源は増税しかない…」と思い込んでいるところが滑稽ですし、そもそも資本主義における信用創造機能というものを理解していないところが実に恐ろしい。
資本主義の信用創造機能は、企業であれ、政府であれ、現時点の所得よりも大きな額の支出を行うことを可能にするものです。
例えば企業の場合、その資金需要に応じて銀行が貨幣創造を行い、貸し出してくれます。
その預金通貨(デジタルデータであり、現金ではありません)を獲得した企業は、設備投資などの支出をするわけですが、売上による収入はその後になります。
そして収入を原資にした借金返済は、さらにその後になります。
つまり「支出が先、収入が後」という順序なのでございます。
その順序は政府も同じです。
政府もまた、防衛であろうと、少子化対策であろうと、環境対策であろうと、資金需要があれば銀行(政府の場合は中央銀行)が貨幣を創造してくれます。
すなわち、政府が日銀に持つ「当座預金」にデジタルデータとしての貨幣が創造されます。
それを政府が支出する。
これにより国民のための防衛サービス、少子化対策サービス、環境対策サービスが提供され、国民の需要が充たされるわけです。
そのとき、政府が支出した分(信用創造された分)は、当然のことながらインフレ圧力になりますので、その一部を徴税によって政府が回収することになります。(租税は、財源確保の手段ではない)
なので、やはり「支出が先、収入が後」という順序です。
以上のとおり、企業や政府にとっては、「財源=需要」なのです。
日本経済新聞には理解できないのかもしれませんが…
しかも、さらに重要な点は、企業には借金を返済する義務が生じますが、政府にはそれがないことです。
多くの人たちが「政府債務の返済は徴税に拠らねばならない…」と誤解されていますが、そうではありません。
事実、政府の債務管理は常に「借り換え」です。
借り換えとは、国債の償還期限が来たら新規国債を発行し、それで同額の国債の償還を行うことです。
8月29日付けの当該ブログでも説明しているとおり、ほとんどの先進国において、国家予算に計上する国債費は利払費のみで、償還費を含めていません。(国債費を計上している先進国は、日本だけ)
なぜなら、政府債務は完済しなければならないものではないからです。(インフレ率が上昇しすぎてバブル経済になったときなどは、税金による償還が必要)
何度でも言います。
財政は「支出が先、収入が後」であることが常識です。