各省庁には、テレビ局のほか新聞や通信社などの記者が常駐する記者クラブが設置されています。
財務省内に設置されている記者クラブは「財政研究会」と呼ばれています。
略して「財研(ざいけん)」などとも呼ばれています。
この財研こそが、日本のメディアが国家予算や税制、あるいは政府の金融財政政策などを取材し報道する際の拠点になっています。
なお、金融庁にも記者クラブがあり、協力して取材にあたっているらしいのですが、経済関係の記者クラブの中で最も常駐人数が多いのが「財政研究会」となっています。
もしも、この財研から締め出されてしまうと、そのメディアは財務省様から情報を貰えなくなり、予算や税財政に関わる報道ができなくなってしまいます。
日本のメディアが財務省様の御用新聞と成り果てていくのは、こうした理由からです。
例えば、2023年8月10日付の時事通信の記事をみますと、次のようにあります。
『国の借金、1276兆円=過去最大を更新―6月末
https://sp.m.jiji.com/article/show/3017888
財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」の残高が6月末で1276兆3155億円になったと発表した。3月末から5兆8165億円増加し、過去最大を更新した。7月1日時点の人口推計の概算値(1億2456万人)を基に単純計算すると、国民1人当たりの借金は約1025万円となる。防衛費や子ども・子育て支援策など今後も歳出増加が見込まれ、国の借金は膨らみ続ける公算が大きい。日銀が7月に金融政策を修正した影響で、金利は上昇傾向にある。国債の利払い費が増えれば、財政はさらに圧迫されることになる。(後略)』
こうした記事は、まさに財務省様から賜った資料をもとにして書かれ、掲載され報道されています。
これを読んだ心純粋なる財務省臣民たちは、「あぁ、国の借金が1276兆円もあるのかぁ、防衛や福祉にもカネがかかるしぃ、たしかに消費税を増税しないとやっていけないなぁ〜」となるわけです。
当該ブログの常連読者の皆様には釈迦に説法となりますが、上記記事には財政破綻論というプロパガンダを目的にいくつかの嘘が散りばめられています。
例えば「国の借金」という言葉。
これは「国の借金」ではなく、正しくは「政府の負債」です。
もっといえば、主権通貨国である我が国の場合は「通貨発行残高」です。
地球上のどこの国においても、政府の負債(通貨発行残高)が減っていく国などありません。
増えて当然なのでございます。
因みに「国」と言うのであれば、国全体のバランスシートをみると、莫大な対外純資産を保有している我が国は世界最大の純債権国です。
一方、記事にある「国民一人当たりの借金は約1025万円となる」のくだりも嘘。
繰り返しますが、約1276兆円は政府の負債であって、国民の負債ではありません。
ご承知のとおり、日本の個人金融資産は2000兆円を超えているわけですが、政府債務はむしろその原資です。
そのことは、それこそ財務省が公表している『資金循環統計』でも明らかです。
これまで、各メディアがこれを報道する際には、国民一人当たり〇〇円の「計算になる」という記事にしていました。
そう書かないと、完全なる嘘になってしまうからです。
ところが今や、「計算になる」とさえ書かなくなってしまいました。
「どうせ嘘をつくなら、大きくついたほうがいい…」とでも財務省様からのご指導があったのでしょうか。
今ほど、国民のメディア・リテラシーが求められている時代はないと思います。
何度でも言いますが、主権通貨国が経済活動を行うかぎり、政府の負債も国民の預金(資産)も両建てで増え続けて行くものなのです。