日本経済新聞に「大機小機」というコラムがあります。
たいていマーケット2面の左上に掲載されています。
当該コラムは、経済財政をはじめ、金融や企業動向について独特の皮肉や辛口トークで書かれているのが特徴です。
私に言わせれば、日本経済新聞は財務省の御用新聞なので、経済や財政については平然と嘘を書くこともしばしばですし、そのバイアスをさっぴいて読まなければならない困った新聞なのですが、8月11日付けの「大機小機」はことのほか酷かった。
そのタイトルは…
「消費増税=景気悪化」の誤解
…というものでした。
コラムは政府税調の中期答申について書いているのですが、どうやら日本経済新聞としては、答申が防衛費や少子化対策などの歳出拡大に財源確保の重要性を指摘しつつ、「消費増税には触れなかった」ことが大いに不満だったらしい。
その不満を解消するためなのか、次のように言っています。
「消費増税が景気を悪化させるという理屈は、(中略)目先だけ見る素人には分かりやすいが、経済全体の動きを考える現代の理論家には完全否定される」
そして「消費増税と景気悪化には関係がない」とまで言い切る。
まさに嘘と詭弁にまみれた物言いです。
というか、その理論家とやらを連れてこい、と言いたくなります。
まず何よりも「消費増税=景気悪化」には明確な根拠があります。
消費税が増税されると、賃金が上昇しないままモノの値段が上がりますので、要するに実質賃金が低下するので、着実に消費が減退します。
その理屈は、コストプッシュ型インフレと同じです。
なお、消費税は「消費」に対する罰則税です。
よって消費の冷え込みは必然ですので、景気が悪化するのも当然です。
また、消費(需要)の減少は、企業の設備投資を減らします。
しかも、消費税が増税されるたびに消費の増加率が低減していることは、過去のデータからも、即ち計量経済学分析上の統計的優位な帰結を得られています。
要するに、基本的な経済理論から考えても、実証データから考えても、消費増税による景気悪化説に根拠があることは明らかです。
にもかかわらずコラム(大機小機)は、これらの事実関係を完全に無視し、消費税を増税しても景気が悪くならない根拠があるかのように嘘をつく。
実に馬鹿げているのは「需要不足を考えない公共経済学」を持ち出して、それを根拠にしていることです。
今の日本経済はまさに需要不足だろうに。
それに「消費増税による消費減退があっても、増税前の駆け込み需要があるから相殺される…」と言っていますが、事実として相殺されておらず、駆け込み需要以上に消費は減退しています。
まちがいなく言えることは、8月11日の「大機小機」には誤解が多い、というより嘘が多いことです。