60年償還ルール、というのをご存知でしょうか。
上のグラフのとおり、日本政府(財務省)は発行した国債を60年かけて償還し、貨幣を消滅させています。
例えば今年、政府が600億円の国債を発行したとします
やがて10年後に100億円を現金で償還し、残りの500億円を借り換えます。
さらに20年後、再び100億円を現金で償還し、残りの400億円を借り換えます。
30年後、やはり100億円を現金で償還し、残りの300億円を借り換えます。
40年後、100億円を現金で償還し、残りの200億円を借り換えます。
50年後、100億円を現金で償還し、残りの100億円を借り換え、こうして60年後にすべてを償還する。
これが60年償還ルールです。
要するに借換債を含め、全体として60年で償還し終えるわけです。
因みに、世界広しと言えども、60年償還ルールによって国債を償還している国は我が日本政府だけです。
どこの国でも、自国通貨建てで発行した国債については、借り換えの連続であり実質的に返済はしていません。
現に日本でさえ、60年償還ルールにより償還はしているものの、結局は借り換えの連続です。
いつも言うように、自国通貨建てで発行した国債については、インフレ率(国内経済の供給能力)が許す限りにおいて償還する必要などありません。
なのに愚かなる財務省は、税収を原資にして国債を償還しています。
「それじゃぁ借金が膨らむ一方ではないか…」という疑問をお持ちになられるかもしれませんが、そうです。
貨幣のプール論に洗脳されている人たちには理解し難いことかもしれませんが、主権通貨国の国債発行残高というものは年々膨らんでいくものです。
現に、我が国政府の2021年度末の負債残高は、1872年末比で4424万倍、物価の影響を除いた実質ベースでも1885年末比で626倍となっています。
それでも、政府財政が破産したことなど一度もありません。
くどいようですが、主権通貨国の負債残高というものは、そういうものなのでございます。
ゆえに政治の世界では今、この「60年償還ルール」を見直すべきだ、という意見がでています。
自民党の政務調査会(防衛関係費の財源検討に関する特命委員会)の提言(ことし6月8日)にも次のような箇所があります。
「いわゆる60年償還ルールに基づく国債償還財源の定率繰入れの見直しに関する議論について…(中略)本特命委員会では、この定額繰入れの沿革について、あくまで公債政策に関する政府の節度ある姿勢を明示するために導入されたものであり、文字どおりの減債、すなわち国債発行残高の減少を目指すものではなかったことを確認した」
これまでにない、実に画期的な提言です。
60年償還ルールは健全財政の姿勢を示すためだけのものであって、国債発行残高の減少を目指すものではないと言っているわけです。
即ち、国債発行残高を減少させる必要性がないことを認めているわけです。
この提言はあくまでも自民党の政務調査会の文書ですが、このことが国会での議論を通じ議事録としてオーソライズされ、政府の公式見解として認められれば、少しは我が国にも希望の光が見えてくるような気がします。