きのう夜9時から放映されたNHKスペシャルを観ました。
番組テーマは「パンデミック 激動の世界」でした。
コロナパンデミックが世界中を襲ったなかで、病院、病床ともにOECD加盟国中で最も多い医療大国の日本において、なぜ病床が逼迫しているのか?
という「問い」を投げかけつつ、「NHKは実態に迫る!」みたいな雰囲気で番組が編集されていました。
とはいえ「どうして医療大国の日本において病床が逼迫するのか?」に対する答えは単純なものです。
番組でも取り上げているように、全国にある一般病床と感染症病床のうち、コロナ病床として稼働しているのはたったの4%にすぎないのですから、逼迫しても何ら不思議はないと思います。
番組は小難しいドキュメンタリー調に仕立てられていますが、それほど難しい問題ではありません。(解決策については後ほど述べます)
それでいて番組は、残念ながら肝心なところにまでは踏み込んでいません。
肝心なところとは、当該問題の根底には財務省が主導する緊縮財政(歳出削減主義)があることです。
NHKのみならず多くのメディア、そして多くの日本国民が誤解されていますが、まず「日本にはおカネがない…」という誤った認識が根底にあり、おカネがないから医療費を削減しなければならない、でもパンデミックなどが発生すれば人々の命を救うための医療ニーズにも対応しなければならないから「さぁ、どうしよう!」という結論に至るわけです。
しかしながら、現在の日本政府に深刻な財政問題などありません。
我が国は主権通貨国(変動為替相場性を採用する国、及び自国通貨建てで国債を発行できる国)です。
主権通貨国であるかぎり、インフレ率(物価上昇率)という制約を除き政府の通貨発行(政府支出の拡大)に上限はありません。
ゆえに、NHKを含むメディアが言う「医療費を賄う財源が足りない」というのは明らかな嘘です。
きのうの番組では途中、本市で医務監をお勤めになられている坂元先生も出演され、実に明快に当該問題のポイントをついておられました。
それは「地域医療構想会議は実質的に病床削減会議である」というくだりです。
地域医療構想会議とは国(厚労省)が全国の都道府県に設置させている会議(協議の場)のことで、坂元先生が述べられているとおり、47都道府県で「(国の医療費支出を削減するために)いかにして病床を減らすか…」という議論が為されています。
むろん厚労省に「もっと病床を減らせ…」と言っているのは財務省です。
要するに国は地域医療構想を通じて「もっと病床を減らせ!」と言い、全国の病院は同構想を通じて「いかにして経営を改善するか」を考えてきたわけです。
今や、公立病院ですら愚かにも黒字経営を追求する始末です。
ですが、地域医療は警察、消防、自衛隊と同様に国民生活の安全保障を担っています。
安全保障を担うセクターが「黒字」を追求してしまったら、その時点で職責を果たすことは不可能です。
では、コロナに限らず、いかなる疫病パンデミックでも病床を逼迫させないためにはどうしたら良いのか?
そんなに難しいことではありません。
国(厚労省)や各自治体が、財源と強制力をもって病床と医療人材を確保できるようにすればいいだけの話です。
そもそも、例えば3次救急の許可をもらっているのにもかかわらずコロナ患者を受け入れていない病院があること事態が腑に落ちない。
コロナ患者を受け入れてくれる病院(病床)が少ないのは、我が国が医療を経営の対象とみなしてきた結果です。
我が国の医療改革は「医療は、経営ではなく“安全保障”である」という根本に立ち返るところからはじめられねばならない。