今年度の最低賃金は全国加重平均で1000円台となる見通しで、過去最大の引き上げ幅になるようです。
とはいえ、それで実質賃金が上がるわけではありませんが…
ご承知のとおり日本経済は1997年以降、常にデフレ経済です。
国内で働く人たちにとって最も重要な指標項目である「実質賃金」は一貫して下がり続けてきましたが、生産年齢人口比率が低下していく我が国においては、やがては否が応でも人手不足から実質賃金が上昇していくことになるであろうし、各企業は技術開発投資や設備投資によって生産性向上を図り人手不足を解消しようとするに違いない、と考えられてきたわけですが、歴代政権の間違った政策によってそうはなりませんでした。
むろん、間違った政策とは、①異次元の緊縮財政と、②外国人労働者の受け入れ拡大です。
政府の緊縮財政がデフレを深刻化させ、デフレの長期化が企業による投資を抑制させ、実質賃金を引き下げ続けてきたのは周知のとおりです。
また、日本の人手不足解消のために「外国人労働者(移民)」が必要だという議論は昔からありました。
ある移民推進派の一人が、30年前に既に次のように主張していたのを思い出します。
「今までの日本社会が閉鎖的であったことを考えると、外国人労働者を一定程度受け入れることは日本の社会を国際化する、開かれたものにするという意味でいい刺激になると思う。将来の日本の高齢化、高学歴化、経済のサービス化、この三つが進むとどうしても熟練度の低い職種において外国人労働者が必要になるだろう。そうした低熟練の外国人を受け入れ、一定の訓練や教育を与え、必要な職種に就いてもらう体制を整えるべきだ」
どうでしょうか。
日本社会が閉鎖的であるかどうかは別の議論として、こうした考え方は実に「人種差別的」かつ「職業差別的」だと私は思います。
仮に「低熟練・低賃金の職で、日本人が就きたがらない」のであれば、生産性の向上により賃金を引き上げ、「その職に日本人が就けば家を建てられる」という状況にするべきです。
それこそが、資本主義というものです。
前述の移民推進派は「低賃金の非熟練職は外国人にでもやらせておけ…」と言っているわけで、露骨なまでの差別主義者です。
ところが現実の世の中は、残念にもこの人が望む方向に進んでしまい、「技能実習制度」がはじまりました。
結果、我が国は「生産性の向上により国民の実質賃金を引き上げる」という資本主義の王道を歩むことができなくなり、低賃金の非熟練職において「技能実習生」という名の“奴隷的労働力”が活用されるようになったのです。
それを最も喜んだのは、デフレ産業とその株主たちでしょう。
その代償として、我が国は「生産性向上により、国民の実質賃金を引き上げる」という資本主義の王道を歩むことが不可能となり、企業(デフレ産業)は低賃金で外国人を雇いつつ、日本人をも安く使うことができるようになり短期的な利益を拡大していきました。
そのことがまた、生産性向上のための投資を更に減退させ、中長期的な競争力の向上(=単位労働コストの削減)を不可能にさせていったのでございます。
ご存知でしょうか?
2019年4月に制定された特定技能制度について、この期に及んでなお岸田内閣は「特定技能2号」の拡大を閣議決定しています。
資本主義を知らぬ総理と内閣が歴代続いていきます。