経済成長とは、GDPが増えること。
これ以外に定義はありません。
それを理解することなく「経済成長」を口にする政治家、学者、評論家、あるいはワイドショー番組でお馴染みのコメンテーターたちがあまりにも多すぎて困ります。
現在、日本が抱えている政治課題の多くは、というよりほとんど全てがこうした「用語定義の不明確さ」に起因していると言っても過言ではありません。
例えば、いつも言うように財政破綻論などは「貨幣」の定義に対する誤解から生じています。
国民の多くが「貨幣」の定義をきちんと理解したとき、我が国の財政問題はきれいに解決されることでしょう。
とにもかくにもGDPが増えるか否かが経済にとっては誠に重要なわけですが、実は「GDPとは何か…」を理解していない人たちがこれまた大勢おられます。
GDPとは、即ち日本全国の「所得」の合計です。
では、その「所得」とは、どのようなプロセスで創出されるのかは以下のとおりです。
まず、ある生産者がモノやサービスを「生産」します。
それをお客さんが、おカネを「支出」して購入します。
このとき、生産者の「生産」と「所得」、そしてお客さんの「支出」は必ず一致します。
生産=所得=支出
これをGDP三面等価一致の原則といい、くどいようですが、このGDPを増やすことこそが経済成長なのでございます。
ゆえに、GDPが増える国は、まちがいなく「豊かになっている」と言っていい。
ところが、岸田総理は「緊縮財政をやりながらGDPを増やす…」と、まことに不思議なことを主張しています。
なぜ不思議なのか?
むろん、政府が緊縮財政で歳出を削減すれば、前述の「支出」が必ず減るからです。
GDP三面等価一致の原則により、「支出」が減れば必ず「所得」、即ちGDPが減ることになります。
しかもデフレ経済により民間の投資・消費が低迷基調にあるなかで、政府が緊縮財政によって一層需要を減退させるのですから尚更です。
さて、2023年1〜3月期(2023年Q1)の実質GDPが内閣府から発表されたとき、各メディアは「3四半期ぶりのプラス成長」「実質額でコロナ以前を上回る」「成長軌道に期待がかかる」と一斉に報じました。
「実質GDPがコロナ前を回復…」と言うけれど、コロナ前の2019年10月には消費税の税率が引き上げられています。(8%→10%)
冒頭のグラフのとおり、それによって実質GDPは落ち込んでいます。
落ち込んだ時点の実質GDPと比較して「コロナ前を回復…」と喧伝するのはいかがなものでしょうか。
消費税増税(8%→10%)前の実質GDPは557.4兆円ですので、それと比較するとまだまだ下回っています。
なぜ、あたかも上回っているような報道がなされるのか。
おそらくは政府(財務省)による情報操作があるのではないかと推察します。
インボイス制度の導入、あるいは給与所得控除の撤廃等々、増税による国民負担を今後さらに押し付けていくにあたり、少しでも景気状況を良く見せることで「増税やむなし…」の世論を形成しようとしているのではないでしょうか。