自治体のインフラ・セキュリティーを強化せよ

自治体のインフラ・セキュリティーを強化せよ

去る7月15日及び16日の両日、台湾有事に日本政府がどのように対応すべきかをシミュレーション(模擬演習)し検証する催しが東京都内で開かれました。

主催したのは、元自衛隊幹部らがつくるシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」です。

この催しは過去にも二度ばかり開催されていますが、昨年末、日本政府が相手の領域にあるミサイル発射拠点などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有を決めてからは初めての実施となりました。

よって今回は日本が敵基地攻撃能力を有していることを前提に行われたわけですが、あとは前回どおり、国会議員が首相や閣僚の役割などを務め、政府が求められる行動を一つずつ検証したとのことです。

模擬演習の内容と結果については、私はまだ知りません。

ただ、昨日のブログでも申し上げましたとおり、もしも当該模擬演習が「集団的自衛権の発動」を前提とされているものであるのなら、そうでない場合もシミュレーションしておくべきではないでしょうか。

さて、中共と台湾の間における危機は、歴史を遡ればこれまで三度ありました。

一度目は、1954年から翌年にかけての「第一次台湾海峡危機」です。

台湾はこのとき、浙江省南部の島嶼などを奪われています。

二度目は1958年で、人民解放軍が台湾の金門島を砲撃したのですが、このときは台湾側が守り抜きました。

三度目は1995年から翌年3月にかけてです。

初めての台湾総統選挙で李登輝が当選したのですが、これに際し中共は台湾独立の気運が高まるのを恐れ、ミサイル発射実験と併せて大規模な軍事演習を断行しました。

このときは、米国が対抗して複数の航空母艦を近海まで出動させるなど圧倒的なプレゼンスを示したことで、当時は未だ通常兵器では全く米軍に及ばなかった中国が退いてひとまず事態が収拾されました。

因みにこれらとは別に、1962年に毛沢東が内政で失敗し国力が弱まったことで、それを蒋介石が反攻の好機と捉え大陸へ上陸しようと試みたことがあります。

いわゆる「国光計画」ですが、結局、米国に諭されて未遂に終わっています。

過去三度の危機時に比べ、現在の中国は軍事力が飛躍的に拡張しました。

彼の国における2022年の国防予算は約26兆3000億円で、日本の約5倍、台湾の約14倍となっています。

とりわけ、対台湾ミサイルの質・量ともに向上し、航空戦力においては遼寧をはじめ航空母艦2隻が出現、今後も増やされる見通しです。

これに対して台湾は、米国が台湾関係法に基づいて提供したF16やパトリオットミサイルなどが配備されていますが、前述の国光計画のような事態になれば全面戦争の恐れもあるため、米国としては台湾への軍事支援は行いつつも、常にブレーキをかけながらコントロールしている状況が続いています。

また、中国に脅しはかけつつも、台湾のために本気で戦うつもりがあるのかどうかさえ疑われるほどに、米国の姿勢は「曖昧戦略」などと揶揄されています。

一方、中国の軍事力が飛躍的に拡張されたとはいえ、人民解放軍による台湾侵攻にはまだまだ課題も多い。

例えば地形的にも、台湾海峡は130〜260キロと幅が広く、水深も浅く、その上、東シナ海と南シナ海の間に位置しているため潮の流れも速く、気象も不順で雲や霧がかかることもしばしばです。

さらには、中国に面した台湾の西側の海岸は大軍の上陸には適していません。

それに、中国の台湾侵攻には、後続の陸軍と合わせて30万人ほどの陸上戦力が必要になりますが、これだけの人員と補給品を運んで揚陸する船舶や航空機がまだまだ足りていません。

これらを勘案すると、習近平体制が余程に不安定化し、台湾を攻撃しなければクビが繋がらないという状況にでもならなければ、今すぐ戦火を交えることはなさそうです。

むろん、先々の有事に備えることに越したことはありません。

まずは、ミサイル潜水艦の建造とともに、弾頭の保管場所についても検討しておくべきでしょうし、そのほか地上発射のミサイル装備や核・通常兵器併用の米軍ミサイルの国内設置等々、直ぐにでも実行しておくべき課題は多い。

それに、サイバー空間においては既に戦場であり、こればかりは専守防衛などあり得ない。

なにより当該分野は軍事施設のみならず、ライフラインなど、重要インフラ施設への攻撃にも対処しなければならない分野です。

くれぐれもカネを惜しまず、存分に投資を拡大してほしい。

政府は地方交付税交付金を充実させ、各地方自治体に対しインフラ・セキュリティーの強化を促しておくべきです。