先日、フジテレビの報道番組を拝見しました。
番組では台湾有事をテーマに、その際の我が国(自衛隊)の対応について専門家(元陸将)による解説が行われていました。
解説によれば、日本政府が「存立危機事態」と認定した場合には、集団的自衛権が発動され自衛隊が動くことになる、とのことでした。
はて?
中共が台湾に軍事侵攻した場合、台湾が米国や日本に対して「集団的自衛権」の行使を求めてくることはあり得るのでしょうか。
私は、あり得ないと思います。
少なくとも米国が、台湾との集団的自衛権によって台湾有事に参戦することはないはずです。
なぜなら、米国は台湾との間に相互防衛条約を有しておらず、その根拠も持っていないからです。
そもそも外交上、米国は台湾を中国の一部と認めており、残念ながら台湾は国連加盟国として認められておりません。
即ち国連加盟国でない台湾は、米国や日本に対して集団的自衛権発動の要請をする権利など有していないのです。
かつて米国は、たしか1884年頃だったと思いますが、ニカラグアの反政府グループ「コントラ」を支援するために、ニカラグアに軍隊を送ったことがあります。
ところが、ニカラグア政府から「軍事介入は他国に対する内政干渉ではないか」として国際司法裁判所に訴えられたのです。
1886年には、国際司法裁判所の判決により、米国はニカラグアに対する賠償を命ぜられることになりました。
最終的に米国は、拒否権を発動することで賠償を行わず、ニカラグア政府の請求権取り下げを受けて1991年に裁判は終了となりました。
これと同様、もしも米国が台湾有事に介入した場合、中共から「内政干渉だ…」と国際司法裁判所に訴えられる可能性があります。
仮にそうなっても「再び米国は拒否権を使えばいいではないか…」という考え方もありますが、前述の国際裁判所の判決は「今なお有効だ」とする意見が国連では多いらしい。
よって、米国が台湾有事で集団的自衛権を行使し、さらに米国が日本に対し集団的自衛権行使を要請するというシナリオは国際法の観点からも考えられません。
ではどうするか?
おそらく米国は自衛権の発動ではなく、台湾に軍事侵攻しようとする中国を「平和の破壊者」と認定し、米国を中心とする、出来るだけ多くの国々による多国籍軍、もしくは有志連合軍を編成するはずです。
その上で、「経済制裁」→「軍事制裁」の順序にて、即ち「集団安全保障の集団的措置(集団的自衛権ではない)」によって、事態を収拾しようとするのではないかと推察します。
むろん日本国としては、台湾有事の際、集団安全保障(集団的措置)にどこまで参加するのか、腹をくくっておかねばなりません。
残念ながら我が国においては、「集団的自衛権」と「集団安全保障」の違いを知る国会議員は少ない。