亡国のプライマリー・バランス

亡国のプライマリー・バランス

それにつけても、消費税ほど欠陥の多い税制はない。

まず、その名前のとおり、消費税は国民の消費に課せられた罰金税です。

例えば、たばこ税は喫煙者を増やさないために課される税であり、炭素税は二酸化炭素を増やさないために課せられる税です。

それと同様、消費税は結果として「消費を増やさないための税」になっています。

きのうも申し上げましたとおり、消費(民間最終消費)はGDPの約6割を占めており、それが抑制されるのですから、経済にマイナスの影響が出ないほうがおかしい。

また、その意味で消費税はGDPに課せられた罰則税であると言ってもいい。

現に日本経済は、消費税増税した1997年以降にデフレ化し、GDPの成長が止まってしまいました。

その後も、デフレの国がGDPに罰金を課しているわけですから、全くもって目も当てられない。

また、消費税は消費に掛かっているように見えますが、実態は事業者の付加価値(粗利益)に課せられた税であり、消費者は価格に転嫁された分を負担しているだけです。

ゆえに、価格交渉力のない事業者は消費者に転嫁できず、消費税を飲むことを強いられます。

この税制がさらに罪深いのは、正規雇用を非正規や業務委託契約に切り替えさせたことです。

正規雇用の従業員を個人事業主とし、業務委託契約で同じ仕事をしてもらうと、企業側からしてみると課税仕入れが増え、消費税負担が減り、社会保険料の負担もなくなる仕組みになっています。

2000年代に入って、日本の雇用が非正規化され、個人事業主が激増した主因の一つは間違いなくこの消費税です。

消費税は我が国の雇用不安定化の一因なのです。

また、消費税は好況や不況に関係なく、例え恐慌経済にあっても容赦なく徴収される財務省にとっての安定財源となっています。

しかも、消費税対所得税の比率をみますと、消費税は高所得者ほど負担が軽く、低所得者ほど負担が重くなります。

低所得者のほうが消費性向は高いのですから当然です。

こんな欠点だらけの消費税をなぜ、政府(財務省)は増税し続けるのでしょうか。

因みに、ことし10月からは、正規雇用から個人事業主にさせられた人たちにも消費税を負担させるインボイス制度が導入されます。

どこまで鬼なのか。

消費税をふくめ、財務省が増税を正当化させている政治的目標こそが、プライマリー・バランス(以下、PB)黒字化です。

PBとは、政府の収入と支出の差額、すなわち「収支」のことです。

支出の方が多ければ「赤字」となり、収入のほうが多ければ「黒字」になります。

これだけだと「なんだ、当たり前のことじゃないか…」と思われるかもしれません。

問題はここで言うところの「支出」と「収入」の定義です。

ここで言う「支出」には債務償還費や利払い費が含まれず、「収入」には公債費収入が含まれないのが味噌です。

政府支出には、防衛費や文教費、あるいは公共事業や社会保障費等々、債務償還費や利払い費以外の行政活動ための支出があります。

そうした行政活動のための支出と、借金以外の収入を差し引いてバランスさせるのがPBです。

これを黒字化するということは、行政活動のための支出(債務償還費や利払い費を含まない)よりも、借金以外の収入(公債費収入を含まない)の方を大きくするというわけです。

即ちPB黒字化は、新たな国債(貨幣)を発行せず、なおかつ民間経済から貨幣を回収するということになります。

デフレとは名目GDP(モノやサービスを購入するための貨幣)が不足した状態です。

よって、PB黒字化を目指せば目指すほどに、経済がデフレ化するのも当然です。

こうしたバカげた目標を毎年、ご丁寧にも「閣議決定」してまで追求しているのが今の我が国の政治なのです。

そして何よりも、このPB黒字化目標を「健全財政」だと思い込んでいる官僚、学者、政治家、マスコミこそが世の中を悪くしているのでございます。

因みに、健全財政(PB黒字化)の必要性を唱え続けている学者の一人が、伊藤元重(東大名誉教授)です。

伊藤元重氏、PB黒字化「できるだけ早く持っていくことが第一」 - 日本経済新聞

経済財政諮問会議の民間議員を務める学習院大学の伊藤元重教授は1日、フォーリン・プ…
www.nikkei.com

7月10日、日本維新の会が、首長や地方議員、そして特別党員向けに講演会を開きました。

その講師が、なんと伊藤元重でした。

いろんな意味で、終わってます…

(敬称略)