農林水産省が公表する我が国の食料自給率は37%ですが、実質的な食料自給率はもっと下がります。
例えば、もっとも自給率が高いとされるおコメは97%、鶏卵が97%、野菜が80%となっていますが、タネや飼料の約9割を海外に依存しているため、実質的な自給率は次のようになります。
コメ=11%
鶏卵=12%
野菜=8%
もっとも高い自給率を誇るコメ、鶏卵、野菜でさえ、このような状況ですから、他の食料の実質的な自給率はもっと低い。
牛乳・乳製品の自給率は61%ですが、飼料自給率を考慮に入れますと実質的な自給率は26%。
同様に、飼料自給率を考慮に入れた牛肉の実質的な自給率は9%、豚肉の実質的な自給率は6%となります。
なにせ、化学肥料原料のリン、カリウムの100%、尿素の96%は輸入依存なのでございます。
因みに鶏卵についても、雛鳥の100%が海外からの輸入ですから、鶏卵の実質的な自給率はほぼ0%と言っても過言ではありません。
しかも、我が国はリンと尿素の多くを中国に依存してますが、その中国が自国内の需要への対応を優先しており、輸出を抑制しています。
加えて、ロシア・ウクライナ戦争の勃発もあって、カリウムを依存していたロシアとベラルーシが輸出を抑制しています。
結果、日本はあっという間に「肥料不足」の状況に陥りました。
それ以前に、コロナ禍による物流停滞と異常気象の常態化による農作物の不作が相まって我が国の食料価格の高騰が続いているわけです。
いわゆる、クワトロ・ショック(①コロナ禍による物流停滞、②中国の爆買い、③異常気象の常態化による不作、④ウクライナ戦争によるショック)です。
とりわけ、肥料原料の価格が約2倍に跳ね上がっているのですが、それはまだ「良い方」で、肥料によっては今後の生産が見込めず、メーカーが価格見込みを出せない種類すらあるらしい。
今は未だ「食料品が高い…」と不満を口にしつつも、なんとか買うことができているからいいのかもしれない。
近い将来、多くの日本国民がお財布のなかにおカネがあるにもかかわらず、食料を手にすることができない事態が発生するかもしれません。
それこそが、食料危機です。
食料危機とは、食料品の価格が高騰することではなく、食料自給力の貧弱さから、カネはあるのに食料そのものにありつけない状態を言います。
むろん食料自給力を向上させるために必要なのは、なによりも政府支出の拡大です。
といっても増税の必要はありません。
ふつうに国債(新たな貨幣)を発行すればいいだけです。
そのカネ(新たに発行された貨幣)で肥料原料や飼料の備蓄を拡大しつつ、増産された農作物を政府が一定価格で買い取っていくしかありません。
国家財政や地方自治体の財政が黒字収支でも、国民が食料にありつけないのでは何の意味もないのでございます。