無関心でいることの恐ろしさ

無関心でいることの恐ろしさ

ことしの10月1日から、いよいよインボイス制度がはじまりますが、あきらかに周知不足ではないでしょうか。

財務省は執拗に「複数税率に対応した消費税の仕入税額控除方式の制度です…」として喧伝していますが、免税事業者のみならず一般国民の多くもまだまだ関心は薄いように感じます。

先週の段階でも、私の知る免税事業者などは、インボイス(適格請求書)を発行するためには税務署に登録申請しなければならないことを未だに理解していませんでした。

経世論研究所の三橋貴明先生が、この状態を「ニーメラ牧師の詩」に例えておられましたが言い得て妙です。

「ナチスが共産主義者を連れさったとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。彼らが社会民主主義者を牢獄に入れたとき、私は声をあげなかった。社会民主主義者ではなかったから。彼らが労働組合員らを連れさったとき、私は声をあげなかった。労働組合員ではなかったから。彼らが私を連れさったとき、私のために声をあげる者は誰一人残っていなかった」(ニーメラ牧師)

ニーメラ牧師の詩は、政治に無関心でいることの恐ろしさを伝えてくれます。

さて、インボイス制度を知る前に、まずは「消費税とは何か?」を知らねばならないわけですが、消費税そのものについてさえ、とかく誤解が多い。

そもそも消費税が「預かり金ではない」ことを知る人は少ないし、消費税の納税者は消費者でなく事業者であることを知らぬ人も多い。

消費税を納税する義務を負っているのは消費者でなく、あくまでも事業者です。

また、国民の圧倒的多数は、消費税を除いた本体価格に税率10%が加算されて販売価格となっていると信じて疑わない。

「でもレシートには、そのように記載されているじゃん…」と言う人がいるかもしれませんが、レシート表記はそのように幻想させるための仕掛けに過ぎません。

兎にも角にも、インボイス制度の中身を正確に理解している人は、一般国民においてはほぼ皆無であると同時に、国・地方を問わず議員においても極めて限定的です。

あろうことか、税理士でさえ少数派です。

現に、消費税が預り金だと誤解している税理士は大勢います。

このままでは、政治家や学者は言うに及ばず、税理士さえもほとんど何も理解しないまま、インボイス制度が導入されることになります。

インボイス制度を一言で言うと、今まで消費税を納税していなかった全ての売り上げ1000万円以下の零細業者の「粗利」(=総売上から仕入れ費用を差し引いた額)の9.1%(=1/11)に相当する金額を、誰かが負担しなければならなくなる、というものです。

なお、それを負担するのは零細業者だけではないところが味噌です

彼らを含めて、負担者は以下の三種類になります。

1)零細業者

2)零細業者を下請け業者として取引している業者

3)消費者

最も大きな負担を強いられるであろうと考えられるのはむろん零細業者ですが、そうした零細業者を下請け業者として取引している業者、一般の消費者にも影響が出ます。

例えば零細業者を下請けとする業者Aが、インボイス制度の登録をしない零細業者Bと取引を続けた場合、業者Aが零細業者Bに代わってその消費税を負担することになります。

結局、零細業者であれ、取引先業者であれ、業者はその負担分を価格に転嫁することになりますので、当然のことながら私たち消費者にその負担が押し付けられることになるのです。

断言しますが、インボイス制度に公益上のメリットなど一切ありません。

インボイス制度の導入により、知らず知らずのうちにカネを財務省に吸い上げられるようになり、日本国民のさらなる貧困化、日本国家の衰退が加速することになります。

「私は知らなかった…」では済まされない。