川崎市政が、日本国民たる川崎市民を「豊かにする…」ということは、それ即ち市民におカネを配ることではなく、市民の「所得を増やす」ことです。
では、所得とは何か?
あるいは、所得創出のプロセスとはどういうものか?
残念ながら行政関係者であっても、これをきちんと理解している人は少ない。
少ないというより、そういう人に会ったことがない。
以下、所得創出のプロセスを具体的に明示します。
まず、Aという市民が生産者として働きます。
働くとは、要するに「モノの生産、サービスの供給」を意味しています。
例えば農産物や工業製品などの「モノ」の生産も、接客業や美容院などの「サービス」の供給も、ともに人間が働いて生み出したもの(付加価値)です。
マクロ経済ではモノの生産やサービスの供給のことを、まとめて「生産」と表現します。
因みに、モノとサービスの違いは、モノは在庫が可能であるのに対し、サービスは在庫が不可能であることです。
さて、Aさんが生産した「モノ」が、例えば一個1,000円の「梨」だったとしましょう。(※Aさんは無からコストゼロで梨を生産したと仮定する)
その梨を一つ、川崎市が1,000円で購入しました。
この瞬間、川崎市が「支出」した金額は1,000円、Aさんが「生産」した付加価値が1,000円、Aさんの「所得」が1,000円となります。
ゆえに、支出(需要)=生産=所得、となります。
これがGDPの三面等価の原則です。
誰かの支出が、必ず誰かの所得になるのはこのためです。
GDPは支出面でみますと…
民間最終消費支出+政府最終消費支出+民間住宅+民間企業設備+公的固定資本形成+在庫変動+純輸出
…になります。
川崎市という地方政府が「梨」という商品を購入して消費したのですから、政府最終消費支出が1,000円増えたわけです。
このように中央政府であれ、地方政府であれ、政府が支出(消費、投資)を増やすと、必ずGDP(所得)は増えます。
そして、国民一人あたりのGDPを増やすことができれば、まちがいなく国民は豊かになるのでございます。
デフレに苦しむ現在の日本において必要なのは、支出、即ち消費や投資といった「需要」の拡大です。
需要とは、具体的にはモノやサービスを購入する量のことです。
誰かがモノやサービスの購入量を増やす(=需要拡大)だけで、この忌まわしいデフレ経済は終わるのです。
とはいえ、デフレ下の民間企業は投資や消費を抑制していますし(むろん、儲からないから…)、あるいは家計もまた実質賃金や可処分所得の低迷を受けて消費を抑制しています。
こうした状況において、主体的かつ着実に需要を拡大できる存在は政府(中央・地方)しかないのです。
なお、ここで重要なのは、誰かによって「生産された」モノやサービスを、他の誰かが購入しなければGDP(所得)にはならないということです。
繰り返しますが、必ず「誰かの手によって生産されなければならない」のです。
例えば行政が給付する「生活保護費」は、所得移転といって直接的には新たなGDP(所得)にはなりません。(生活保護費は生産の対価ではないので)
生活保護者がそれを使ってモノやサービスを購入(支出)することで初めてGDP(誰かの所得)になります。
生活保護費のほか、例えば本日の川崎市議会で議決される補正予算案(議案112号)に計上されている『太陽光発電設備導入支援事業費』は市内GDPにはなりません。
この予算は、太陽光パネル設置の施工IDを取得しようとする事業者の研修費を全額補助する、というものです。
これもまた生活保護費と同様に「所得移転」であって、新たなGDP(所得)にはなりません。
行政支出は、できるだけ直接的にGDP(所得)になるように支出しなければならない。
なぜなら、市税収入は市内GDPに相関するからです。
これがワイズスペンディング(賢い支出)です。
ゆえに、私および私の所属する会派は、会派の統一意志として、本日の採決では「議案112号」に反対することになっています。
因みに、我が会派は既に委員会審議でも反対しています。