多くの皆様にとっては誠に信じがたい事かもしれませんが、歴然たる事実として政府にとって税収は財源ではありません。
では何のために、私たち国民は税金を納めているのでしょうか。
その答えは次の5つ。
政府が税を徴収する目的は…
①インフレ率の調整
②好景気と不景気の際の調整弁
③所得格差の調整
④特定の政策誘導
⑤租税貨幣論
まず①の役割についてですが、貨幣発行により無から財源を調達できる政府は、支出した後、税収によって貨幣を回収することでインフレ率を抑制しています。
そして②は、景気低迷期には国民の税負担を軽くして消費や投資を促し、好景気により経済が加熱し過ぎているときには国民の税負担を重くして消費や投資を抑制することで景気循環を調整します。
③は、累進課税制度等によって、できるだけ所得格差を小さくし、分厚い中間所得層を構築します。
④は、例えば「たばこ税」のように、国民の健康を守るという政策目的のために「たばこを吸う人」に税を課して喫煙者を減らします。
あるいは、二酸化炭素の排出量を抑制する、という政策目的のための「炭素税」などもそれにあたります。
⑤の租税貨幣論は、日本政府が発行する通貨(円)を法定通貨にするための仕組みとでも理解して頂ければ結構です。
兎にも角にも①から⑤に至るまで、税収に財源確保の目的など一切ありません。
そこで本日は、②と③について取り上げたいと思います。
好景気と不景気、あるいは所得格差を調整するための代表的な税が直接税(所得税・法人税)です。
前述のとおり、所得税には累進課税制度があります。
最低税率は5%(課税所得195万円以下)、最高税率は45%(同4000万円超)となっており、できるだけ貧富の格差が拡大しないように税率に差をつけてあるわけです。
ただし、最高税率の人であっても、課税所得195万円分は5%、195万円~220万円分は10%と、所得全体に段階的に税率が適用される仕組みになっていますので、年収4000万円だから「4000万円x45%」という税額になるわけではありません。
一方、法人税は、好景気で利益を上げた企業ほど高くなり、不景気で利益を得ることができない企業ほど安くなるようになっています。
赤字企業に至っては納めなくてもいい。
いわゆる、ビルトイン・スタビライザー機能(埋め込まれた自動安定化機能)です。
ところが、1995年以降の日本では、このビルトイン・スタビライザー機能がほとんど機能していません。
それを証明しているのが、冒頭の国民負担率のグラフです。
国民負担率とは、国民所得(NI)に占める租税負担と社会保障負担の割合です。
ご覧のとおり、私が生まれたころの国民負担率は、わずか24.3%ですが、1991年にバブルが崩壊するまで右肩上がりに増え続けています。
右肩上がりに増えてはいるものの、この時期はそれなりに経済は成長していたのですから国民負担率が増え続けたのも当然です。
そのかわり、バブルが崩壊した1991年以降の2〜3年は、ビルトイン・スタビライザー機能により国民負担率は下がりました。
ところが、グラフをご覧のとおり1994年以降は下げ止まっています。
おそらくこれは、1989年に導入された消費税の影響かと思われます。
当該ブログでも繰り返し述べておりますように、消費税は「累進制度なき第2法人税」です。
よって、どんなに景気が落ち込み、売上や利益が大幅に減っても事業者の納税負担は変わらない。
1997年にはさらに消費税の税率が引き上げられ、1998年以降、日本経済はデフレに突入したにもかかわらず、一向に国民負担率は下がっていません。
本来、ビルトイン・スタビライザーが機能すれば、デフレ期の国民負担率は抑制されるはずです。
それどころか2003年以降、今度は鰻のぼりに国民負担率は上昇し13%近くも上がっています。
なぜか?
2002年、小泉内閣の閣僚であった竹中平蔵氏が「プライマリー・バランス規律」(以下、PB規律)を導入したからです。
PB規律とは、政府支出を税収の範囲内に抑えるという規律です。
考えてみてほしい。
少子高齢化により政府の社会保障支出が増えていくなかでPB規律を導入したのですから、社会保険料など国民の社会保障負担が引き上げられたのも当然です。
こうして我が国は、デフレを脱却できず所得を増やせないままに、ただただ国民負担率だけが増えていく状況に陥っていったわけです。
したがって、ここから導き出される正しい政策は、PB規律の廃止と、消費税の廃止もしくは減税です。
にもかかわらず、PB規律は廃止される見込みもなく、消費税は減税されるどころか、10月からはインボイス制度が導入されるなど、岸田内閣(財務省は)はさらに国民負担率を引き上げようとしています。
正気の沙汰ではない。
これを容認している野党もまた然りです。