企業会計では、取引先や社員などが負担すべきおカネを、支払う前に会社が一時的に預かった場合、そのおカネは「預り金」という勘定項目に算入されます。
例えば、源泉徴収がそうです。
A社に勤めている〇〇さんは、給料の中から国に所得税を納めなければならないのですが、わざわざ〇〇さんご本人が税務署に赴いて納税しているわけではありません。
A社が一時的に預かり、即ちA社が源泉徴収して〇〇さんに変わって納税しています。
因みに、源泉徴収された所得税は税務署へ、住民税は市町村へ、社会保険料は事業主の負担分を加えて社会保険事務所などに納付されています。
ポイントは、このときA社(事業者)は「預からねばならない義務」を負っていることです。
さて、消費税の場合はどうでしょうか。
多くの国民が誤解をされていますが、消費税は消費者が負担すべきおカネを事業者が一時的に預かっているものではありません。
このように言うと、「レシートには金額の一部が消費税であると記載されているではないか…」と反論する人もおられるでしょう。
例えば、コンビニで原価100円のおにぎりを購入する場合、私たちは「原価100円に消費税10円が加わって110円を支払っている。また、その消費税10円をコンビニが預かっている」と考えがちですが、まったくの嘘です。
消費税は「預り金」でもないし、支払った10円は法的には消費税ではありません。
信じがたいことかもしれませんが、これは裁判所の判決でも確定している紛れもない事実です。
そもそも消費税は、消費者が負担すべき税金ではなく、事業者の粗利益(付加価値)に課した税です。
納税する義務は消費者でなく事業者に負わされているのです。
なので、本来は「消費税」ではなく「付加価値税」と呼ぶべきなのですが、あたかも消費者に負担させているかのような幻想を国民に抱かせるために財務省(当時は大蔵省)はこれを「消費税」と命名したのです。
さて、粗利益(付加価値)とは、売上から売上原価(課税仕入れ)を差し引いたものです。
財務会計上、粗利益は、①利益と②非課税仕入れで構成されます。
この①に課されるのが法人税であり、①+②に課されるのが消費税です。
ここに、消費税が第2法人税と言われる所以があります。
実はこの第2法人税を最初に導入しようとしたのは中曽根内閣です。
当初は「売上税」と呼んでいました。
1987年(私が高校2年生のとき)に、この売上税を導入するため、中曽根内閣は国会に法案を提出したのですが、「第2法人税などけしからん…」という財界からの強い反発もあって廃案に追い込まれました。
その翌年(1988年)、大蔵省は、竹下内閣のもとで「売上税」ではなく「消費税」と名称を変えて成立させたのです。
増税分は取引先や消費者に価格転嫁してもよいことになったので、財界は納得したのでしょう。
消費者への価格転嫁を、多くの国民が「消費者が負担すべきもの…」と誤解したわけです。
それでも消費税導入当初は、課税売上3000万円以下の事業者は課税対象から外されていたのですが、やがてそれが1000万円以下となり、ついにはインボイス制導入の名のもとに、すべての事業者が課税対象とされるわけです。
これにより、消費税は完璧に「累進制度なき直接税」となります。
インボイス制度導入は、まちがいなくコストプッシュ・インフレ圧力となり、事実上の増税でもありますので消費や投資を抑制します。
これだけ経済が低迷し、物価も上がり、多くの人々が所得を減らし苦しんでいるときに、なぜ増税するのでしょうか。
コストプッシュ・インフレに見舞われ、実質賃金が低下する今、政府が物価を下げる最も効果的な方法は消費税を減税することにあるはずです。
コロナ禍によって世界的な経済不況がはじまったころ、即ち3年前の時点で30〜40ヶ国の国々が消費税(外国では付加価値税)減税を行っています。
今日の時点では、そうした国々が100ヶ国以上に増えています。
どこの国も、消費税が国民経済を停滞させることをきちんと理解しているのです。
即ち、インボイス制度導入(≒消費税増税)は経済政策としても完全に間違っています。
なのに、消費税の何たるかを理解せぬ者たちが、無責任にインボイス制導入に賛成もしくは容認をしています。
政治は常に「国民の利益」を第一に考えるべきです。
国会議員であれ、地方議員であれ、「属する政党がインボイス制度に賛成しているから自分も賛成(容認)します」などと言う議員は即刻辞職せよ。